コラム

2021.09.01

新型コロナウイルス感染症と精神疾患について

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は新型コロナウイルス感染症と精神疾患に関して説明していきます。
まず結論から言うと、
新型コロナウイルス感染症は未知なことが多いので、その精神的な影響は計り知れません。そんな新型コロナウイルス感染症は様々な精神疾患を引き起こすだけでなく、もともとある精神疾患を増悪・再発させる恐れもあります。特に、本文中に書いた精神的な影響を受けやすい方は気になることがあれば早期に医療機関への相談や、公的機関、企業のオンラインサービスなどを利用していただき、精神的な影響を少しでも軽減できればと思います。
では以下に詳しく見ていきましょう。

目次

1.新型コロナウイルス感染症の精神的影響

世界各地でまん延する新型コロナウイルス感染症は、ワクチンの普及により感染拡大が落ち着くと思われていました。しかし、インドで発生したデルタ株が世界各国でまん延した影響により、さらに感染拡大が懸念されています。
新型コロナウイルス感染症は発熱や息苦しさなど身体的な影響を与えるだけでなく、感染症自体の恐怖や不安、日常生活への影響などから極めて強いストレスがもたらされています。さらに、感染症拡大に伴う自粛生活によって、他の人とのコミュニケーションが少なくなってしまいます。そのため、孤立感や孤独感が強くなり、ストレスが蓄積されてしまいます。
その結果、新型コロナウイルス感染症は不安や抑うつ、ストレス関連症状、不眠などの精神的な影響が多数報告され、長期的には心的外傷後ストレス障害やうつ病、不安症の発症、元々ある精神疾患が悪化すると懸念されています。

特に、今回の新型コロナウイルス感染症は、1995年の地下鉄サリン事件や2011年の福島第一原子力発電所事故と同じ、特殊災害に分類されました。この特殊災害は不確定な要素が多い災害であるため、不安や恐怖が強まりやすく、多くの社会的混乱を及ぼしうるとされています。

2.新型コロナウイルス感染症による精神疾患の発症・増悪

自然災害や他の感染症拡大など、周囲の状況が大きく変化するような出来事があると、人は精神疾患を発症したり、状態が安定した人でも再発や悪化したりする場合があります。今回の新型コロナウイルス感染症も、同じような状況が懸念されています。そこで、新型コロナウイルス感染症がどのように精神疾患と関連するのか解説していきます。

 ①心的外傷後ストレス障害(PTSD)
目に見えない感染症への恐怖、自由を奪う隔離生活、新型コロナウイルス感染症患者やその家族に対する偏見や中傷などの体験は、心的外傷後ストレス障害を引き起こすリスクとなります。
中国における新型コロナウイルス感染症患者を対象とした心的外傷後ストレス障害チェックリストを用いた調査では、96.2%に一定以上顕著な心的外傷後ストレス兆候が見られたことが報告されています。

この報告からも分かる通り、日本においても新型コロナウイルス感染症に感染し重症化したり、感染に関わる暴力的な偏見を受けたりすると、心的外傷後ストレス障害を発症することに繋がると考えられます。

 ②うつ病
新型コロナウイルス感染症の発症や隔離生活、また感染症による経済的不安などは強いストレスとなり、それが長期間に及ぶと抑うつ傾向を増悪させる恐れがあります。そして、長期間の抑うつ傾向が続くと、うつ病の発症のリスクが高くなります。

③不安障害・強迫性障害
新型コロナウイルス感染症は手洗いやうがい、マスク着用などを行うことが推奨されています。また、これら感染症対策は強くアナウンスされています。このように手洗いの徹底や除菌が強く推奨されている中で、自分自身あるいは周囲の人や物にウイルスが付着しているのではないかと心配し、過剰に洗浄や消毒を行うなどがあります。これが不安障害・強迫性障害の発症に繋がったり、症状を増悪させたりすることがあります。

④その他
その他にも不安と関連した精神疾患として、社交不安症や全般不安症などがあります。これらは新型コロナウイルス感染症の感染予防策の場面と関連して悪化することが懸念されます。
このように新型コロナウイルス感染症は1-4で挙げた疾患以外にも、睡眠や依存症、ストレスに関する障害など、さまざまな精神疾患の発症や増悪の要因となる恐れがあります。

例えば、統合失調症などの精神疾患を罹患しているにもかかわらず、過度な自粛生活から家庭内でのストレスが強くなり、受診や内服薬の中断をしてしまう方がいます。統合失調症が落ち着いていたとしても、それは定期受診や内服薬を飲んでいたからです。それにもかかわらず、定期受診や内服薬を中断してしまうと、統合失調症の状態が悪化するリスクは高まります。

これは他の精神疾患にも同じことが言えますが、自分の判断で定期受診や内服薬を中断するのではなく、必ずかかりつけ医に相談するようにしましょう。病気の状態によっては、通院間隔を伸ばしたり、内服薬を調整したりすることができるかもしれません。

3.新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けやすい人

新型コロナウイルス感染症によって、さまざまなストレスがかかり、精神的な影響を受けることはお分かりいただけたと思います。では、新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けると、全ての人が精神疾患を発症するのでしょうか。

結論から言うと、答えは「精神的な影響を受けやすい人はいます」です。日本精神神経学会らが発行する『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下におけるメンタルヘルス対策指針第1版』によれば、下記のように新型コロナウイルス感染症では特に精神的な影響を受けやすい人がいるとされています。

新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けやすい人に関して、どうして精神的な影響を受けやすいかを簡単に解説していきます。

①新型コロナウイルス感染者、新型コロナウイルス感染者の家族や友人ら関係者
新型コロナウイルス感染者およびその関係者らは、新型コロナウイルス感染症患者の病状や隔離生活の状況を考えると不安にさらされます。そのストレスは計り知れません。

②医療従事者、介護従事者
医療従事者、介護従事者は新型コロナウイルス感染症に対する激務や感染のリスク高いため、ストレスがかかり精神的な影響を受けやすいとされています。

③子どもと保護者
子どもは休校や遊ぶ場が自粛となることで、在宅時間が増え、生活リズムや運動の機会などが失われます。一方で、保護者も子どもの世話をするために、仕事を休む必要が出てきます。また、子どものストレスを解消するためにさまざまな工夫が必要となり、これらが保護者の精神的な負担になると考えられます。

④高齢者
新型コロナウイルス感染症により、対面でのコミュニケーションを遮断されてしまいます。また、発熱時などは病院の受診ができない場合があります。高齢者の方はSNSやスマートフォンなどのサービスを利用できない方も多く、受けられるサービスがかなり制限されてしまいます。
そのため、精神的な負担があっても、「これくらいなら我慢しよう」ということが積み重なり、気付かなないうちに大きな精神的負担がかかっていることもありえます。

⑤女性、特に妊産婦
新型コロナウイルス感染症による外出自粛で、家庭内での衝突やドメスティックバイオレンスの被害を受けるリスクがあります。特に、妊産婦の方は自分だけでなく、子どもに感染させてしまうという不安を常に抱えるため精神的な影響が出やすいとされています。

⑥既存の身体あるいは精神疾患を有する人
もともと身体疾患がある方は新型コロナウイルス感染症に感染すると、重篤化及び死亡率を高める可能性があります。このような懸念から精神的な影響が出やすくなると考えられます。また、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクを考え、病院への定期受診や内服薬の中断をしてしまい、もともとある身体や精神疾患が増悪してしまうこともあります。

⑦低所得者、収入減が著しい人
もともと低所得者やホームレスの方は精神疾患の罹患率が高いですが、新型コロナウイルス感染症の状況下では、その支援や医療を物理的に受けにくくなるため、さらに精神的な影響を受けやすいと考えられます。

また、新型コロナウイルス感染症により、従来通りの経済活動が困難になったため、経営が悪化した企業は少なくありません。そのため、失業したり、収入が減ったりした方は、終わりの見えない経済不安により、さらに精神的な影響を受けてしまいます。

⑧外国人
新型コロナウイルス感染症やその変異株が海外から流入したことを受けて、外国の方は不当な理由で差別されたり、攻撃されたりする対象となることがあります。また、自国や英語での情報は理解できても、日本における感染情報は日本語で発信されることが多いため、その中で生活をするのは強い精神的な負担がかかってしまいます。

 

4.新型コロナウイルス感染症による精神疾患を未然に防ぐ方法

新型コロナウイルス感染症による精神的な影響は大きく、その影響はさまざまな人に影響を与えることは前章で解説しました。そこで、この新型コロナウイルス感染症による精神的な影響を少なくするための方法を解説していきます。

①長引くコロナ渦での精神的な影響に対処する方法
まず長引く自粛生活の中でこれまでと異なった生活様式が求められることで、誰しもストレスが知らず知らずのうちに蓄積されていきます。したがってコロナ渦の中でも出来るストレス解消法をすることが重要になってきます。家庭内での運動や音楽を聴いたり、色々な自分にご褒美をあげるのも良いでしょう。
私が勤務していた奈良県にある「信貴山病院ハートランドしぎさん」という病院で

コロナ禍のセルフケア「ハートランドごほうび大全集❤」
というコロナ渦の中でストレスに対処していくために色々なご褒美をあつめた読み物が公開されています。ストレスの多い中、自身の心をケアする手助けになればと思いますので、ぜひ活用いただければと思います。

また溜まったストレスが色々な精神的な症状、例えば不眠や不安、気分の落ち込みなどの症状として出現することは決して珍しいことではありません。そういった症状が持続することでさらに色々な症状の出現に繋がる恐れがあります。出来るだけ早い段階で医療機関などに相談することが望ましいと考えます。
受診した上で現在の状態に治療が必要なのかどうかを医師が判断し、必要に応じて精神療法や薬物療法、また心理士によるカウンセリングなども有効と考えられます。

②新型コロナウイルスに感染した際の精神疾患を防ぐ方法
新型コロナウイルス感染症に感染すると、感染による恐怖や不安だけでなく、隔離生活による怒りやストレスを感じます。また、家族や親しい人と通常のコミュニケーションを取ることができないため、孤立感が生じる恐れもあります。また、新型コロナウイルス感染症から回復したとしても、休んでいた期間を取り戻すために過労をしたり、差別などを感じたりしてしまい、精神的な影響が長期間に及ぶ恐れもあります。

こういった精神的な影響を軽減するため、できる範囲で構わないので、生活リズムを整えるようにしましょう。また、リラックスできる音楽をかけたり、自宅でも楽しめる娯楽を取り入れたりするのも良いでしょう。
また、他の人とコミュニケーションを取ることも重要です。電話やメールだけでなく、ソーシャルメディアや下記に紹介するオンラインツールなどを用いて、家族や親しい人とコミュニケーションを維持することも精神衛生を保つのに良い取り組みです。
新型コロナウイルス感染症になると、今まで行っていた対面でのコミュニケーションをすることが難しくなります。家族や友人など親しい人とのコミュニケーションは電話やメールなどで行うことができます。しかし、親しい人には相談しにくいプライベートの悩みや仕事上の悩みがある人も少なくありません。

そこで、厚生労働省などの公的機関がさまざまなオンラインツールを提供しています。下記にそのサービスの一部をご紹介します

遠隔で利用できるオンラインサービス

・厚生労働省:新型コロナウイルス感染症関連SNSの相談(相談方法:チャット)  
https://lifelinksns.net/

・厚生労働省:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト:新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)(相談方法:電話
https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/

 ・特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア(相談方法:チャット、SNS)
https://www.npo-tms.or.jp/

これら以外にも多くの機関や企業がさまざまなサービスを提供しています。相談できる相手も医師であったり、心理師であったりと様々です。自分の悩みに合った相談ができるサービスを見つけて相談するようにしましょう。

5.まとめ

新型コロナウイルス感染症はその感染力の強さ、発症した時のことに注目されがちです。しかし、新型コロナウイルス感染症は特殊災害であり、その精神的な負担は未知数です。精神的な負担はさまざまな精神疾患の原因になり、そのなりやすさも人によって異なります。自分が精神的な負担を受けやすい人に分類されないか確認してください。

 ただし、精神的な負担を受けやすい人であっても、過度な心配をするとそれは逆に精神的な負担になってしまいます。もし心配な場合は自分自身で悩みを抱えるのではなく、一度当院に相談頂ければと思います。また本文でもご紹介した、遠隔でも利用できるオンラインサービスなどの活用も効果的だと考えます。

参考文献)

・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下におけるメンタルヘルス対策指針第1版

・Brooks SK et al. (2020) The psychological impact of quarantine and how to reduce it: rapid review of the evidence. Lancet. 14;395(10227):912-920. doi: 10.1016/S0140- 6736(20)30460-8. 4)

・Gunnell D et al. (2020) Suicide risk and prevention during the COVID-19 pandemic. Lancet Psychiat. pii: S2215-0366(20)30171-1. doi: 10.1016/S2215-0366(20)30171-1.

・Chaturvedi SK (2020). Covid-19, coronavirus and mental health rehabilitation at times of crisis. J Psychosoc Rehabil Ment Health. 7:1‒ 2. doi:10.1007/s40737-020-00162-z.

・Tsai J & Wilson M (2020) COVID-19: a potential public health problem for homeless populations. Lancet Public Health. 5(4):e186-e187. doi: 10.1016/S2468- 2667(20)30053-0.

・Lima NNR et al. (2020) People experiencinghomelessness: their potential exposure to COVID-19. Psychiatry Res. 288:112945. doi: 10.1016/j.psychres.2020.112945.

 

 

 

一番上に戻る
TEL.06-6923-8190TEL.06-6923-8190WEB予約WEB予約 WEB予約