コラム

2021.09.01

新型コロナウイルス感染症と精神疾患について

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は新型コロナウイルス感染症と精神疾患に関して説明していきます。
まず結論から言うと、
新型コロナウイルス感染症は未知なことが多いので、その精神的な影響は計り知れません。そんな新型コロナウイルス感染症は様々な精神疾患を引き起こすだけでなく、もともとある精神疾患を増悪・再発させる恐れもあります。特に、本文中に書いた精神的な影響を受けやすい方は気になることがあれば早期に医療機関への相談や、公的機関、企業のオンラインサービスなどを利用していただき、精神的な影響を少しでも軽減できればと思います。
では以下に詳しく見ていきましょう。

目次

1.新型コロナウイルス感染症の精神的影響

世界各地でまん延する新型コロナウイルス感染症は、ワクチンの普及により感染拡大が落ち着くと思われていました。しかし、インドで発生したデルタ株が世界各国でまん延した影響により、さらに感染拡大が懸念されています。
新型コロナウイルス感染症は発熱や息苦しさなど身体的な影響を与えるだけでなく、感染症自体の恐怖や不安、日常生活への影響などから極めて強いストレスがもたらされています。さらに、感染症拡大に伴う自粛生活によって、他の人とのコミュニケーションが少なくなってしまいます。そのため、孤立感や孤独感が強くなり、ストレスが蓄積されてしまいます。
その結果、新型コロナウイルス感染症は不安や抑うつ、ストレス関連症状、不眠などの精神的な影響が多数報告され、長期的には心的外傷後ストレス障害やうつ病、不安症の発症、元々ある精神疾患が悪化すると懸念されています。

特に、今回の新型コロナウイルス感染症は、1995年の地下鉄サリン事件や2011年の福島第一原子力発電所事故と同じ、特殊災害に分類されました。この特殊災害は不確定な要素が多い災害であるため、不安や恐怖が強まりやすく、多くの社会的混乱を及ぼしうるとされています。

2.新型コロナウイルス感染症による精神疾患の発症・増悪

自然災害や他の感染症拡大など、周囲の状況が大きく変化するような出来事があると、人は精神疾患を発症したり、状態が安定した人でも再発や悪化したりする場合があります。今回の新型コロナウイルス感染症も、同じような状況が懸念されています。そこで、新型コロナウイルス感染症がどのように精神疾患と関連するのか解説していきます。

 ①心的外傷後ストレス障害(PTSD)
目に見えない感染症への恐怖、自由を奪う隔離生活、新型コロナウイルス感染症患者やその家族に対する偏見や中傷などの体験は、心的外傷後ストレス障害を引き起こすリスクとなります。
中国における新型コロナウイルス感染症患者を対象とした心的外傷後ストレス障害チェックリストを用いた調査では、96.2%に一定以上顕著な心的外傷後ストレス兆候が見られたことが報告されています。

この報告からも分かる通り、日本においても新型コロナウイルス感染症に感染し重症化したり、感染に関わる暴力的な偏見を受けたりすると、心的外傷後ストレス障害を発症することに繋がると考えられます。

 ②うつ病
新型コロナウイルス感染症の発症や隔離生活、また感染症による経済的不安などは強いストレスとなり、それが長期間に及ぶと抑うつ傾向を増悪させる恐れがあります。そして、長期間の抑うつ傾向が続くと、うつ病の発症のリスクが高くなります。

③不安障害・強迫性障害
新型コロナウイルス感染症は手洗いやうがい、マスク着用などを行うことが推奨されています。また、これら感染症対策は強くアナウンスされています。このように手洗いの徹底や除菌が強く推奨されている中で、自分自身あるいは周囲の人や物にウイルスが付着しているのではないかと心配し、過剰に洗浄や消毒を行うなどがあります。これが不安障害・強迫性障害の発症に繋がったり、症状を増悪させたりすることがあります。

④その他
その他にも不安と関連した精神疾患として、社交不安症や全般不安症などがあります。これらは新型コロナウイルス感染症の感染予防策の場面と関連して悪化することが懸念されます。
このように新型コロナウイルス感染症は1-4で挙げた疾患以外にも、睡眠や依存症、ストレスに関する障害など、さまざまな精神疾患の発症や増悪の要因となる恐れがあります。

例えば、統合失調症などの精神疾患を罹患しているにもかかわらず、過度な自粛生活から家庭内でのストレスが強くなり、受診や内服薬の中断をしてしまう方がいます。統合失調症が落ち着いていたとしても、それは定期受診や内服薬を飲んでいたからです。それにもかかわらず、定期受診や内服薬を中断してしまうと、統合失調症の状態が悪化するリスクは高まります。

これは他の精神疾患にも同じことが言えますが、自分の判断で定期受診や内服薬を中断するのではなく、必ずかかりつけ医に相談するようにしましょう。病気の状態によっては、通院間隔を伸ばしたり、内服薬を調整したりすることができるかもしれません。

3.新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けやすい人

新型コロナウイルス感染症によって、さまざまなストレスがかかり、精神的な影響を受けることはお分かりいただけたと思います。では、新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けると、全ての人が精神疾患を発症するのでしょうか。

結論から言うと、答えは「精神的な影響を受けやすい人はいます」です。日本精神神経学会らが発行する『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下におけるメンタルヘルス対策指針第1版』によれば、下記のように新型コロナウイルス感染症では特に精神的な影響を受けやすい人がいるとされています。

新型コロナウイルス感染症の精神的な影響を受けやすい人に関して、どうして精神的な影響を受けやすいかを簡単に解説していきます。

①新型コロナウイルス感染者、新型コロナウイルス感染者の家族や友人ら関係者
新型コロナウイルス感染者およびその関係者らは、新型コロナウイルス感染症患者の病状や隔離生活の状況を考えると不安にさらされます。そのストレスは計り知れません。

②医療従事者、介護従事者
医療従事者、介護従事者は新型コロナウイルス感染症に対する激務や感染のリスク高いため、ストレスがかかり精神的な影響を受けやすいとされています。

③子どもと保護者
子どもは休校や遊ぶ場が自粛となることで、在宅時間が増え、生活リズムや運動の機会などが失われます。一方で、保護者も子どもの世話をするために、仕事を休む必要が出てきます。また、子どものストレスを解消するためにさまざまな工夫が必要となり、これらが保護者の精神的な負担になると考えられます。

④高齢者
新型コロナウイルス感染症により、対面でのコミュニケーションを遮断されてしまいます。また、発熱時などは病院の受診ができない場合があります。高齢者の方はSNSやスマートフォンなどのサービスを利用できない方も多く、受けられるサービスがかなり制限されてしまいます。
そのため、精神的な負担があっても、「これくらいなら我慢しよう」ということが積み重なり、気付かなないうちに大きな精神的負担がかかっていることもありえます。

⑤女性、特に妊産婦
新型コロナウイルス感染症による外出自粛で、家庭内での衝突やドメスティックバイオレンスの被害を受けるリスクがあります。特に、妊産婦の方は自分だけでなく、子どもに感染させてしまうという不安を常に抱えるため精神的な影響が出やすいとされています。

⑥既存の身体あるいは精神疾患を有する人
もともと身体疾患がある方は新型コロナウイルス感染症に感染すると、重篤化及び死亡率を高める可能性があります。このような懸念から精神的な影響が出やすくなると考えられます。また、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクを考え、病院への定期受診や内服薬の中断をしてしまい、もともとある身体や精神疾患が増悪してしまうこともあります。

⑦低所得者、収入減が著しい人
もともと低所得者やホームレスの方は精神疾患の罹患率が高いですが、新型コロナウイルス感染症の状況下では、その支援や医療を物理的に受けにくくなるため、さらに精神的な影響を受けやすいと考えられます。

また、新型コロナウイルス感染症により、従来通りの経済活動が困難になったため、経営が悪化した企業は少なくありません。そのため、失業したり、収入が減ったりした方は、終わりの見えない経済不安により、さらに精神的な影響を受けてしまいます。

⑧外国人
新型コロナウイルス感染症やその変異株が海外から流入したことを受けて、外国の方は不当な理由で差別されたり、攻撃されたりする対象となることがあります。また、自国や英語での情報は理解できても、日本における感染情報は日本語で発信されることが多いため、その中で生活をするのは強い精神的な負担がかかってしまいます。

 

4.新型コロナウイルス感染症による精神疾患を未然に防ぐ方法

新型コロナウイルス感染症による精神的な影響は大きく、その影響はさまざまな人に影響を与えることは前章で解説しました。そこで、この新型コロナウイルス感染症による精神的な影響を少なくするための方法を解説していきます。

①長引くコロナ渦での精神的な影響に対処する方法
まず長引く自粛生活の中でこれまでと異なった生活様式が求められることで、誰しもストレスが知らず知らずのうちに蓄積されていきます。したがってコロナ渦の中でも出来るストレス解消法をすることが重要になってきます。家庭内での運動や音楽を聴いたり、色々な自分にご褒美をあげるのも良いでしょう。
私が勤務していた奈良県にある「信貴山病院ハートランドしぎさん」という病院で

コロナ禍のセルフケア「ハートランドごほうび大全集❤」
というコロナ渦の中でストレスに対処していくために色々なご褒美をあつめた読み物が公開されています。ストレスの多い中、自身の心をケアする手助けになればと思いますので、ぜひ活用いただければと思います。

また溜まったストレスが色々な精神的な症状、例えば不眠や不安、気分の落ち込みなどの症状として出現することは決して珍しいことではありません。そういった症状が持続することでさらに色々な症状の出現に繋がる恐れがあります。出来るだけ早い段階で医療機関などに相談することが望ましいと考えます。
受診した上で現在の状態に治療が必要なのかどうかを医師が判断し、必要に応じて精神療法や薬物療法、また心理士によるカウンセリングなども有効と考えられます。

②新型コロナウイルスに感染した際の精神疾患を防ぐ方法
新型コロナウイルス感染症に感染すると、感染による恐怖や不安だけでなく、隔離生活による怒りやストレスを感じます。また、家族や親しい人と通常のコミュニケーションを取ることができないため、孤立感が生じる恐れもあります。また、新型コロナウイルス感染症から回復したとしても、休んでいた期間を取り戻すために過労をしたり、差別などを感じたりしてしまい、精神的な影響が長期間に及ぶ恐れもあります。

こういった精神的な影響を軽減するため、できる範囲で構わないので、生活リズムを整えるようにしましょう。また、リラックスできる音楽をかけたり、自宅でも楽しめる娯楽を取り入れたりするのも良いでしょう。
また、他の人とコミュニケーションを取ることも重要です。電話やメールだけでなく、ソーシャルメディアや下記に紹介するオンラインツールなどを用いて、家族や親しい人とコミュニケーションを維持することも精神衛生を保つのに良い取り組みです。
新型コロナウイルス感染症になると、今まで行っていた対面でのコミュニケーションをすることが難しくなります。家族や友人など親しい人とのコミュニケーションは電話やメールなどで行うことができます。しかし、親しい人には相談しにくいプライベートの悩みや仕事上の悩みがある人も少なくありません。

そこで、厚生労働省などの公的機関がさまざまなオンラインツールを提供しています。下記にそのサービスの一部をご紹介します

遠隔で利用できるオンラインサービス

・厚生労働省:新型コロナウイルス感染症関連SNSの相談(相談方法:チャット)  
https://lifelinksns.net/

・厚生労働省:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト:新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)(相談方法:電話
https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/

 ・特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア(相談方法:チャット、SNS)
https://www.npo-tms.or.jp/

これら以外にも多くの機関や企業がさまざまなサービスを提供しています。相談できる相手も医師であったり、心理師であったりと様々です。自分の悩みに合った相談ができるサービスを見つけて相談するようにしましょう。

5.まとめ

新型コロナウイルス感染症はその感染力の強さ、発症した時のことに注目されがちです。しかし、新型コロナウイルス感染症は特殊災害であり、その精神的な負担は未知数です。精神的な負担はさまざまな精神疾患の原因になり、そのなりやすさも人によって異なります。自分が精神的な負担を受けやすい人に分類されないか確認してください。

 ただし、精神的な負担を受けやすい人であっても、過度な心配をするとそれは逆に精神的な負担になってしまいます。もし心配な場合は自分自身で悩みを抱えるのではなく、一度当院に相談頂ければと思います。また本文でもご紹介した、遠隔でも利用できるオンラインサービスなどの活用も効果的だと考えます。

参考文献)

・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下におけるメンタルヘルス対策指針第1版

・Brooks SK et al. (2020) The psychological impact of quarantine and how to reduce it: rapid review of the evidence. Lancet. 14;395(10227):912-920. doi: 10.1016/S0140- 6736(20)30460-8. 4)

・Gunnell D et al. (2020) Suicide risk and prevention during the COVID-19 pandemic. Lancet Psychiat. pii: S2215-0366(20)30171-1. doi: 10.1016/S2215-0366(20)30171-1.

・Chaturvedi SK (2020). Covid-19, coronavirus and mental health rehabilitation at times of crisis. J Psychosoc Rehabil Ment Health. 7:1‒ 2. doi:10.1007/s40737-020-00162-z.

・Tsai J & Wilson M (2020) COVID-19: a potential public health problem for homeless populations. Lancet Public Health. 5(4):e186-e187. doi: 10.1016/S2468- 2667(20)30053-0.

・Lima NNR et al. (2020) People experiencinghomelessness: their potential exposure to COVID-19. Psychiatry Res. 288:112945. doi: 10.1016/j.psychres.2020.112945.

 

 

 

2021.08.09

子どもの問題行動とその対応について

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は子供の問題行動とその対応に関して説明していきます。

まず結論からいうと
問題行動がおこるのには原因と理由があるということ。その行動がなぜ起こっているのかを考える際に応用行動分析という考え方が役に立つということです。
では以下に詳しく見ていきましょう。

目次

1.子どもの問題行動が起こる原因

子どもの問題行動が起こるとき理由がすぐわかるときもあれば、理由がよく分からない時もあるかと思います。
子ども自身が理由を教えてくれたり、なかなか喋ってくれない時、また子ども自身も理由が分からない時もあるかもしれません。
このような時はまず何かしらの理由があって問題行動が起こっていると考えていく姿勢が大事になってきます。(明確な理由が分からない場合もあるのですが…考えるという姿勢が重要です)

例えば座っていられず、すぐ立ち上がったり、教室から飛び出す子どもがいる場合

「どうして」その行動が起こっているのか考えていきます。
この時にその「どうして」というのには2つの意味があります。
①1つはどういう原因で?
例えば発達障害などの基礎疾患がありじっとすることが苦手なのかもしれません。

②もう1つはどういう理由で?これは人のふるまいには理由があるということです。
例えば教室で座っていられない子どもは先生の話がつまらないかもしれないし、勉強が分からないかもしれません。

こういった2つの「どうして」から問題を考えていくことは子どもの行動を考えていくうえで重要になってきます。
また問題行動が起こった際に何が原因か考えていく際に有用な理論として応用行動分析という考え方が役に立ちます。
次の章では応用行動分析に関して説明していきます。

2.応用行動分析とは

応用行動分析 ABA(Applied Behavior Analysis)というのはすべての人間に共通する行動の基本原理に基づいて子どもの行動を理解し問題行動を減らし、適切な行動を増やす働きかけを行っていくことを目的に考えられた考え方になります。

 ABAの基本原理として「なぜその行動が起きているのか考える」ということが基本的な考え方の枠組みになります。
ABAでは行動を理解する際にまず「ABCフレーム」で行動を見ていきます。
AAntecedent「先行事象」、BBehavior「行動」、CConsequence「後続事象」を表します。これを以下の図のような形である行動の前後でどのような事象が起きているのか、それがその行動にどう影響しているのかを細かく見ていきます。

・強化
BCには一定の法則がありこれを強化の原理といいます。
ある行動を起こしたときに、その行動に引き続いて起きた出来事によりその行動がもっと起こるようになるか、あまり起きなくなるかということが決まってくるという考え方になります。 

例えば男の子が家で家事のお手伝いをするとお母さんが褒めてくれました。男の子がうれしくなって、自分からお手伝いをすることが増えました。
お手伝いという行動を褒めるという後続事象によって強化したことでお手伝いをすることが増えたという事になります。

・消去
人は何らかの行動の後にほうびとなる出来事が与えられないとその行動が減っていきます、これを消去と言います。
例えばお手伝いをしてくれる男の子に対してお母さんは初めは褒めていたのですが、だんだん褒めてくれなくなったとします。そうすると、男の子は段々とお手伝いをしなくなってきます。
これが消去です。お手伝いという行動が褒めるという後続事象が与えられないために行動が減少していきました。

加えて、先行事象に関しても説明しておきます。
行動の前にはその行動を起こす「きっかけ」となる何かの刺激があります。これを先行事象といいます。例えば横断歩道を渡る行動のきっかけとなる「信号の青」、学校に行くきっかけとなる「朝8時」という時間など色々な先行事象があります。

この先行事象は普段あまり意識していませんが、意識して「先行事象」を変えてみることで良い行動を起こしやすくするという働きかけがすることも重要になってきます。
これは環境調整、例えば集中しやすい環境を整えてあげたり、指示の出し方を工夫するなどもよい先行事象です。
例えば図書館という環境に移動することで勉強がしやすくなる。また指示を出すときに言葉だけではなく紙に図を描いたものを添えて指示をだすなどの働きかけも良いかもしれません。

ここでは応用行動分析に関して説明していきました。
では実際に応用行動分析を通して子どもの困った行動に対してどう対応してしたら良いか考えていきましょう。

3.子どもの問題行動への対応 応用行動分析を通して

例えば、お菓子売り場でお菓子を買ってもらえずに泣く子どもの行動を応用行動分析で考えていきましょう。
問題行動が何によって強化されているかを知るためには、問題行動自体に着目するのではなくその前後の出来事を観察することが必要です。
子どもがお母さんとお菓子売り場の前を通りかかった際にお菓子を買ってほしいとお母さんに言いましたが「だめ」と言わたためかんしゃくを起こし大きな声で泣き出してしまいました。しばらくするとお母さんが根負けしてお菓子を買ってあげたので、泣き止みました。
これを図で表すと以下になります。

この例の場合、Aのお菓子売り場という先行事象において、Bの子どもが泣くという行動を起こすことによって、Cのお菓子を買ってもらえるという後続事象につながっていることが分かります。
B
の行動を行うことにより、Cのお菓子を買ってもらうという結果につながったため、今後、この子は泣くという行動が増加する可能性があると言えます。お菓子を手に入れることにより前記した「ごほうび」により行動が「強化」されるということです。

問題行動へ対処していく1つの手段として、前の章で説明した消去を利用するのが次の方法になります。人は行動のあとにほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが消去といいます。
先ほどの例だと以下のようになります。

Bの子どもが泣いたことでCのお菓子を買ってもらえる後続事象が起こらないことで、Bの泣く行動が減少していきます。
泣いたり、かんしゃくを起こした場合に自分の要求がかなったり注目することがあると、その行動が強化されていきます。 

スーパーマーケットなど公共の場所で泣いたり、かんしゃくを起こしたら黙って迷惑のかからないところで好きなだけ泣かせます。それが問題行動の減少につながっていきます。
 
上の例のような問題行動に対応するには、①問題行動を減らしながら、それと同時に②良い行動を増やすことが重要になってきます。そのため、強化と消去の両方を使いながら、良い行動を増やしていきます。
良い行動は「強化」によって増やし、今後減らしたい問題行動は「消去」で対応することで減らしていくことが重要になってきます。

この状況では
①泣く行動があってもお菓子を買わないことで泣く行動が減る。
②お菓子を我慢できた時に褒める。褒められたら嬉しいので我慢する行動が増えていく。
上記のような対応を行っていくことが重要になってきます。
また、もともとその先行事象であるお菓子売り場に行かないという事も一つの方法として有効になってくるでしょう。

※消去バーストに注意
悪循環が起こっている際にその悪循環を止めようと強化していた後続事象を止めることで一時的に問題行動が悪化することがあります。
これを消去バーストと言い今までその行動をすることで本人にとってメリットとなっていたことが起こらなくなったため一時的に問題行動をエスカレートさせることでメリットを引き出そうとする行動原理となります。困った行動に消去で対応するときにはこの消去バーストを乗り越える心構えが必要です。
例えば癇癪を起こすことで要求を通していたのに、これまで通り癇癪をおこしても要求が通らないと一時的に癇癪がひどくなることがあります。しかしながらここで要求を聞いてしまうと元のもくあみになってしまいます。

4.まとめ

今日は子どもの問題行動とその対応に関して応用行動分析を通じて考えていきました。
問題行動が繰り返されている場合、その問題行動をすることで何かしらの本人にとってメリットがあることがあり悪循環になっているパターンというのを散見します。
その場合、問題行動が起こった後のその行動が問題行動を強化していないかどうか今一度考えていただいてはどうかと思います。
また家庭内や学校で頑張ろうとしても中々難しい場合もあるので一度相談頂ければ一緒に考えていくこともできるかと思います。
では、今日の話のまとめです。
問題行動がおこったときには原因と理由についてよく考えてみること、
また問題行動が起こっている時にはその先行事象と後続事象をしっかり考えてみましょうというのが今日の話の大事な点でした。
お子さんの問題行動があり困っている際は一度気軽にご相談頂ければ幸いです。

 

参考文献
1子育てに活かすABAハンドブック―応用行動分析学の基礎からサポート・ネットワークづくりまで  三田地 真実  (), 岡村 章司  (), 井上 雅彦 (監修)
2)イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法  藤坂 龍司 (), 松井 絵理子 (), つみきの会 (編集)

2021.05.14

統合失調症の妄想とは?内容や対応方法も説明

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
この記事では統合失調症の妄想に関して対応方法も併せて説明していきます。

 

まず結論からいうと
統合失調症の妄想とは被害妄想や関係妄想と呼ばれる妄想が多く、恐怖や不安を感じるような内容が目立ちます。
また本人はその考えが妄想であることを認識できないことが多いため、周囲の方も対応に苦労することが多いです。
妄想への対応としては妄想に対して否定も肯定もせず、不安な気持ちに共感を示し安心感を与えることが重要になります。

 

では上記に関しさらに詳しく説明していきますのでよろしくお願いします。

目次

 

1.統合失調症ってどんな病気?

統合失調症とはうつ病や双極性障害、不安障害と同様に精神疾患の一つです。
およそ100人に1人の割合で発症するといわれており、決して珍しい病気ではありません。男女比はほぼ同数で発症年齢は10代後半から30代頃までが最も多いといわれています。
この病気は脳の病気で、さまざまな刺激を伝え合う神経のネットワークにトラブルが生じることで起こる脳の機能障害によって起こります。
症状としては陽性症状、陰性症状、認知機能障害が挙げられます。
陽性症状というのは普段ないものが現れてくる症状で、幻覚や妄想などが挙げられます。陰性症状というのは普段あったものがなくなってしまう症状で意欲の減退や、気分の落ち込み、自閉傾向などが挙げられます。認知機能障害とは物事に対する判断や理解力などに支障が出ることで、その結果としてコミュニケーション力が著しく低下することが問題となってきます。
治療としては薬物療法を中心として心理社会的療法などがあります。近年、病気に対する研究の進歩、さまざまな治療薬の開発により、この病気の治療は飛躍的に進歩しています。この病気にかかっても、早期に専門医の適切な治療を受ければ、多くの患者さんは社会生活に復帰することができます。

2.統合失調症の妄想ってどんな妄想があるの?

そもそも妄想とは…

妄想とは非現実的なことや、現実にはありないことを信じ込んでしまうことです。それに対して明らかな反論があってもその考えを訂正することが困難で、妄想を持つ本人はその考えが妄想であると認識できないことが多いです。妄想が出現する病気として統合失調症をはじめ、躁うつ病や、うつ病などの気分障害や、認知症などが挙げられます。しかしながら一概に妄想といっても病気によって出現の仕方や内容が異なるので、その点には注意することが重要になってきます。

 

統合失調症の妄想

 

統合失調症で出現しやすい妄想として以下のようなものが挙げられます。具体例と共に見ていきましょう。

①被害妄想

自分が誰かに攻撃されたり、嫌がらせを受けているというような妄想です。統合失調症で最もよく見られる妄想です。
具体例>
追跡妄想「集団ストーカーにあっている」「警察に尾行されている」など誰かに追跡されているという妄想
注察妄想「部屋に盗聴器がしかけられている」「監視カメラで行動を監視されている」など誰かに見張られているという妄想

②関係妄想

周囲にいる人の言動や、テレビやインターネット上の出来事が自分に関係のあることのように考えてしまう妄想です。

具体例>
「町中ですれ違う人の咳き込みは自分への警告だ」「テレビの特定のCMばかり流れているのは自分に対するあてつけだ」など実際には全く関係ないことを自分に関係あることと考えてしまう

③誇大妄想

自分の能力や価値を実際以上に高く感じ過大評価を抱く妄想です。現実よりもはるかに偉大である、裕福であるなどと考えてしまいます。
具体例>
血統妄想:「自分は貴族の血をひいている」など自分が皇族や貴族など高貴な出自であると考える妄想。
恋愛妄想:「「芸能人、有名人と交際している」など実際にはそのような関係にないのに、ある人に愛されているなど思い込む妄想。


④微小妄想
誇大妄想とは反対に自分を貶め、実際の自分よりもはるかに低く評価してしまう妄想です。
具体例>
貧困妄想:「貯金がすべてなくなってしまった」など実際よりも貧しいと信じる妄想。
心気妄想:「自分は不治の病にかかってしまった」など実際はそうでないのに健康を害してしまったと考えてしまう妄想。

 

以上具体例と共に統合失調症で表れる色々な妄想に関して見ていきました。
なお妄想の内容は個人の状況や発症の背景によって異なるので、上記で挙げた以外の妄想が出現することもあるのでその点は注意してください。

 

3.妄想に対する正しい対応方法とは?

ここでは統合失調症の妄想に対する正しい対応方法と、治療へのつなげる方法に関して説明していきます。

妄想に対する正しい対応

統合失調症の症状が悪化した時には幻覚や妄想など色々な症状が出現します。
またその際には患者さまの人柄や性格がガラッと変わったようになってしまい、家族や周囲の方も戸惑ったり混乱してしまうことがあります。
この時に大切なことは幻覚や妄想などの症状に対し頭ごなしに否定しないことが大切になってきます。

 

妄想が出現している時、患者さんはその妄想によって悩まされています。「組織に追われている」「自分の行動が監視カメラで監視されている」などありえない内容ばかりですが、上記でも説明したように本人はそれが妄想だとは分からず「真実である」と思い込んでいます。
そのためその内容に関して訂正や否定、説得しようとしてもそれが誤りだと納得させることはできません。そればかりか、否定や説得しようとすることで言い争いになったり、患者の不信感が生まれ関係性が悪化することがあります。
また受診に至った際に患者さんと家族の関係性が非常に悪化しているケースも少なくありません。

ではどういった対応が望ましいかを説明してきます。

妄想が出現している時患者さんはその妄想によって追い詰められ、強い不安を感じているので、周囲の人はまずその患者さんの気持ちを理解し寄り添うように心がけましょう。妄想の内容に対しては否定も肯定もせず、不安な気持ちに共感を示し安心感を与えて上げることが大切です。
具体的には「すごく不安だったんだね、一緒にいれば大丈夫だから安心してね」「そういう風に感じているのはしんどかったでしょう、まずはゆっくり休めるようにしよう」などの安心感を与えつつも、気持ちに共感するような声掛けが良いと言われています。
また気持ちが落ち着いた後も妄想がなくなったわけではないので、同じ話を繰り返すこともしばしばあります。その際は「また同じか」と言って片付けず、なるべく淡々と話を聞いてあげるようにしてください。

以上が妄想への対応となります。
繰り返しにはなりますが、妄想に対しては否定も肯定もせずに患者さんの気持ちに寄り添うというのが対応の基本です。

 

治療へのつなげ方

では次に治療につなげる方法に関しても説明していきます。
上記のような正しい対応をしていても妄想に左右されて興奮したり、妄想が原因で色々な困った行動が現れてくることも少なくはありません。例えば「監視カメラを探すために家の中にある電化製品を分解する」「組織から尾行されているので警察に相談に行く」等の行動が出現することもあるかもしれません。その際には早急に医療機関へ受診し適切な治療を受けることが必要です。

 

ⅰ)妄想が出現し患者さん本人が「調子が悪い」と自覚している場合
それに対して一度病院で相談しようと伝えて受診を促せば大丈夫です。可能であれば家族の方や周囲の方が一緒に受診してあげるとなお良いでしょう。

ⅱ)妄想が出現しているが特にそれに対しては困っていない場合
この場合は妄想に関して指摘することで受診をさせることは難しいことが多いです。しかしながら妄想が出現している時は不眠や不安感、気分の落ち込み、気力の低下などの症状が出現することが多いため、そういった症状に対して一度病院で相談しようと促すと受診してくれる場合があります。その際も周囲の方も受診し症状に関して説明して頂ければ診断や治療に役立ちます。患者さんが妄想について話されない場合は、一度患者さんに席を外して頂き同伴者の方にお話を伺いすることもあります。

ⅲ)本人は特に不調を感じていない場合
この場合は病院を受診することが難しい場合が多いのですが、こういった場合も妄想内容によって患者さんは不安を感じていることが多いので「周囲から見て神経が疲れているように見える、心配だから一度受診してもらったら嬉しい」と理由も含めて、率直に伝えましょう。
ただこういった対応をとってもなかなか受診に繋がらない場合もありますが、だまして病院に行くことはやめましょう。だまされたという気持ちで医師に会っても、不信感を感じたままでは治療がうまく進むことは難しいことが多いです。
どうしてもお困りの場合は、家族さんだけでも相談に来ていただければ対応に関してアドバイスすることもできるかと思います。
またどうしても外来治療に繋がらず、治療をしないことのデメリットが多い場合は入院治療なども適応になってきます。入院治療に関しては入院が出来る病院に紹介させて頂くことになるので相談頂ければ幸いです。

また保健所などの精神相談に家族さんが相談に行かれるのも良いかと思います。

ここでは妄想に対する対応と、受診へのつなげ方に関して説明していきました。
どちらに関しても患者さんの気持ちをしっかりと聞いた上でその困っている部分に対してアプローチしていくのが重要になってきます。

  

4.統合失調症の治療に関して

 統合失調症の治療に関しては薬物療法と心理社会的療法の2本柱になってきます。
薬物療法としては抗精神病薬と呼ばれる薬による治療が基本となります。その他、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬などの薬を併用することもあります。
また薬物療法に加えて、心理社会的療法に取り組むことが重要になります。精神科リハビリテーションとしてデイケアや作業療法や生活技能訓練、心理教育などを、それぞれの専門家と連携しながら進めていきます。
では薬物療法、心理社会的療法に関して以下に詳しく見ていきましょう。

 

①薬物療法

統合失調症の薬物療法は抗精神病薬と呼ばれるドーパミンと呼ばれる神経伝達物質に対して作用する薬が使われます。統合失調症では脳内のドーパミンが過剰に分泌されていると考えられているので、薬物療法を行うことでドーパミンを調整することで幻覚や妄想などの陽性症状の改善が期待できます。
抗精神病薬の種類も様々な種類があり、昔から使われている定型抗精神病薬と呼ばれる薬剤や近年開発された非定型抗精神病薬と呼ばれる薬があります。非定型抗精神病薬の方が副作用が少なく基本的には非定型抗精神病薬が薬物療法の第一選択として選ばれます。
非定型抗精神病薬の中でも色々な種類があり、患者さんの症状や副作用などによって薬剤選択が行われます。
最近では陽性症状が改善した後に社会復帰に向けてなるべく副作用の少ない薬剤を選択するといった治療方針が一般的であり、非定型抗精神病薬の中でも非鎮静系と呼ばれる眠気や身体のだるさなどの日常生活の支障となりやすい副作用の少ない薬剤を使用することが多いです。

 

②心理社会的療法
統合失調症の心理社会的療法としては精神療法やソーシャルスキルトレーニング、精神科デイケアなどが挙げられます。
ここでは精神療法としてよく実施されている、心理教育に関して説明していきます。
統合失調症は病識が得られにくい病気と言われています。「病識」とは自分が病気であるということを認識するということです。
そのため統合失調症の方は治療につながりにくかったり、治療継続が難しいことが知られています。統合失調症は症状の悪化を繰り返すたびに症状が治りにくくなると言われており、治療を中断すると2年以内に80%の方が再発すると言われています。
そのため治療を継続していき症状が再発しないようにすることが非常に重要であり、そのためにご自身が病気であるということ「病識」をつけていくことが大切になってきます。
この「病識」が持てるようになるために診察で話し合ったり、病気に関して説明を行っていきます。
また症状悪化のサイン(しばしば症状が悪化する前に普段よりイライラしやすくなったり、不眠が出現するなどの前兆があります)に関して相談しておくことで、症状悪化を未然に防ぐことが可能になります。

ここでは薬物療法、心理社会的療法に関して見ていきました。
統合失調症の方の治療としては上記2つを組み合わせて行っていくことが重要になっていきます。薬物療法に関しても副作用などに関してしっかりと相談しながら治療をすすめていくことが可能です。また心理社会的療法に関しても連携している就労支援施設などとも
相談しながら社会復帰に向けて治療を進めていくことが可能ですのでご相談ください。

 

 

まとめ

この記事では統合失調症の妄想に関して、病気の説明から妄想内容や対応方法、治療などに関して説明していきました。
統合失調症は病識が生まれにくく、妄想自体も本人はその考えが妄想であると分からないためご家族や周囲の方が対応に困られていることが多いです。
また妄想のような症状が出現した時にそれが妄想なのかどうか、病気であるかどうか判断に迷うこともあるかと思います。
妄想に対して家族としてどう対応したらよいか分からない、妄想が本当に病気なのか、また妄想に対しての治療を行っていきたいなどのお悩みがあれば、一度にご相談頂ければ幸いです。

 

 参考文献
1)統合失調症 診断と治療のABC136 村井俊哉 企画
2)統合失調症 正しい理解と治療法 伊藤純一郎 監修

2021.04.30

ADHDの診断に関して 検査方法や診断後の治療も併せて

こんにちは大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。

今日はADHDの診断に関し検査方法や診断後の治療も併せて説明していきたいと思います。
最初に本日の記事を簡潔にまとめると、 ADHDと診断されるにはADHDの診断基準を満たしておりそれが12歳以前より存在していること、またその発達凸凹があることで日常生活に支障を生じていることが必要になってきます。
そのため現在の症状やそれによる日々の生活の困りごとに加え、小さい頃や学生時代の話、周囲の方からの客観的な情報を聴取した上で、心理検査などを実施します。 以上の情報から総合的に判断し診断をしていくということが一般的な流れになっていきます。

目次

1.ADHDとは

ADHD(注意欠如多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの特徴を主な症状として認める発達障害の1つです。
子どものADHDは100人に5人程度見られると言われており、女児より男児に3~5倍にに多く認められることが知られています。
大人のADHDは様々な報告がありますが、その結果を総合すると2.5%程度と言われており、男女比も1:1になると言われています。
原因としては脳の機能異常によるものと考えられており、脳のネットワーク調整の不良によって実行機能や報酬系、時間調節機能に障害があると言われています。
発達障害は子どもから大人になる過程で症状が改善する方もおられますが、基本的には生まれ持った特性なので幼少期から大人まで継続していくものと考えられます。
また近年大人になる過程で症状が目立つようになり大人になってからADHDと診断される方が増えていると言われています。
これは子どもの時は保護的な環境で症状が目立たなかった方が大人になるとともに生活の変化、例えば結婚や転職などの環境の変化で負荷が増えることで症状が目立ってきたと考えられています。
具体的には子どもは両親や学校の先生に「忘れ物やケアレスミスが多い、集中力が続かない。立ち歩きがある、ジッとすることが出来ない、口より手が出てしまう」などの困りごとを指摘されて受診される一方、大人の場合は「仕事でミスが多い、忘れ物が多い、整理整頓ができない」などの困りごとをご自身で訴えて受診される方が多い印象です。
ADHDの症状の特徴を以下に挙げておきます。

2.ADHDの診断方法

ADHDの診断に関しては生まれてからこれまでの生育歴と現在の困りごとや診察室の様子、心理検査やその他の検査を通して総合的に行います。  
診断のポイントとして12歳以前から症状が持続していること、その症状は子どもであれば家と学校、大人であれば家と職場など2つ以上の状況で症状を認めることが重要になってきます。
そのため本人の主観的な症状だけでなく家族や学校の先生、職場の上司や同僚など客観的な意見も重要になってきます。
また「自閉スペクトラム症」など他の発達障害でも不注意などの症状が出ることがあるため他の発達障害が原因ではないか、また他の発達障害が併存することもあるのでそちらに関しても注意することが重要です。加えて「うつ病」などのその他の精神疾患が原因で集中力の低下などの症状が起こることがあるため、そういった症状がないのか考えてくことも必要になってきます。 当院では診察を行った後、子どもであればご家族や学校の先生に「ADHD評価スケール」というチェックリストを記載し、大人の場合「CAARS」という自己記入式のチェックリストを記載して頂き情報収集を行います。その後知能検査や人格検査などの心理検査を実施した上で診断を行っていく流れとなっています。

3.ADHDの検査

ADHDの検査に関しては
①質問用紙法による評価スケール
②心理検査
③器質的疾患の検査
などを必要に応じて行っていくことになります。
各種検査に関して説明した上で当院で実施している検査に関しても説明していきます。

①質問用紙法による評価スケール

質問用紙を使って一貫した指標で行動を評価していくことはADHDの診断に役立ちます。
現在わが国で使用されているADHDの評価尺度は「ADHD-RS」と「Conners 3」と「Conners Adult ADHD Rating Scale」になります。
1)ADHD-RS
ADHD-Rating ScaleはADHDの診断基準に沿った不注意、多動性‐衝動性に関する18項目を4段階で評価していく評価尺度になります。またこれは学校版と家庭版に分かれており年齢別に基準となる点数も設定されています。
もともとはアメリカで作成された評価尺度で日本では2008年に翻訳出版され「日本ADHD学会評価スケール作成委員会」によって評価を行った上で日本版のスコアシートが作成されました。 こちらは診断の参考にもなりますし、薬物療法やその他の治療の有効性の評価にも役に立ちます。  
2) Conners 3
この評価尺度は1960年代にジョンズ・ホプキンス病院のコナーズ博士が精神科を受診した青少年の問題を把握することを目的に両親や学校の先生が記入できる尺度を開発したことをきっかけに作成されました。
「コナーズ評価スケール」から改定を重ね2008年に「Conners 3」が登場しました。 この評価尺度は保護者110項目、教師115項目、本人99項目からなります。 日本で使用されている「Conners 3日本語版」は親用、教師用、本人用がありロングバージョンで親用110項目、教師用115項目、本人用99項目となっており、ショートバージョンはそれぞれ41項目で構成されています。
ADHD-RSより項目数が多い分、色々な面からの評価が可能になりますがADHD-RSが18項目なのに比べて圧倒的に項目が多いため採点や評価に時間がかかることが難点です。また日本語版の妥当性が検討されていない点も注意を要するところです。  
3) Conners Adult ADHD Rating Scale(CAAARS 日本語版)
上記のコナーズの成人版の評価尺度になります。日本語版があり、18歳以上の成人を対象に本人用と家族用の2種類があり66項目の質問から構成されています。
質問の回答結果からADHDの不注意、多動性、衝動性など各症状の困り感が数値で出ます。

現段階で上記3つの評価尺度がありますが、当院では「ADHD-RS」と「CAARS」を実施しております。ただ自己記入式の評価尺度になるため、その結果だけで診断ができるものではなくその他の情報も加味して総合的に診断していくことになります。    

②心理検査

心理検査には大きく分けて知能検査・発達検査や人格検査などがありますが、必要に応じて色々な心理検査を組み合わせて評価を行っていきます。
ここでは知能検査・発達検査と人格検査に分けてADHDの検査に関して説明をしていきます。
1)知能検査・発達検査
知能検査・発達検査として日本で行われているものとしては「ウェクスラー式知能検査」と「ビネー式知能検査」と「K式発達検査」が良く使われています。
ここで気を付けてほしいのは知能検査・発達検査上でADHDの方はその発達特性に応じた得意苦手を認めることが多いのですが、検査のみでADHD等の発達障害の有無を判別できるということではありません。知能検査・発達検査はあくまで診断の補助的なものでありそれ以外の項目からも総合的に判断していくことになります。
当院では「ウェクスラー式知能検査」を実施しており対象年齢5歳~16歳までのWISC-Ⅳとそれ以上の年齢が対象のWAIS-Ⅲ、Ⅳを実施しております。  
2)人格検査
一般的に人格検査と呼ばれるもので良く行われているものとして「描画テスト」「文章完成法」「PFスタディ」「ロールシャッハテスト」などが挙げられます。
こういった検査は上記の知能検査・発達検査が認知的な側面に対して評価していくことに対して情緒的な側面に関して評価を行っていく検査になります。
ADHDの方は少なからず症状として「落ち着きのなさ」「がまんのなさ」「気の散りやすさや、だらしなさ」を認めており、それが日常的にネガティブな評価を受けることで結果的に「自信のなさ」「不安」や「気分の落ち込み」「気力のなさ」などの問題が生じると言われています。
そのためそういった点にも注意し情緒的、気持ちの面での評価を行っていくことが必要になっていきます。
当院では描画検査を中心に、必要に応じて他の人格検査を実施しております。    

③器質的な疾患の検査

器質的な疾患とは臓器そのものに炎症や癌などの病変があり、その結果として様々な症状が出現する病気のことをいいます。
臓器そのものに異常があり、症状が出ている病気のため、検査を行えば必ず症状の原因となる異常が見つかります。
身体的な病気が原因でADHDのような症状が出現することがあるため、必要に応じ検査を実施して器質的な疾患を除外していくことが必要になってきます。
例えば「てんかん」は突然のけいれんや意識消失などの発作を特徴とする病気ですが、その発作の後に出る症状として「もうろう状態」と言ってボーっとしてしまう症状があります。
その「もうろう状態」が不注意や多動に見えることがあります。
また睡眠障害の1つでナルコレプシーなどの突然の眠気を特徴とする病気や、甲状線の病気など色々な病気で不注意・多動・衝動性が出現する可能性があります。
上記のような身体の病気を区別するために必要に応じて脳波検査や血液検査、CTやMRIなどの頭部画像検査を実施する必要があります。
ただし上記のような身体の病気がある場合は不注意や多動・衝動性以外にも別の症状が出現する、幼少期からなどではなくある一定の時期から突然症状が出現するなど典型的なADHDの経過と異なることが多いです。
そのため症状の出現時期や、それ以外の症状がないかしっかりと症状の経過を聞いていくことがこのような身体の病気を見分ける基本となってきます。
当院では脳波検査や頭部画像検査は行っていないので、これまでの経過や症状の出現の仕方などをお伺いした上で必要があれば他の医療機関での検査を実施させて頂きます。  
以上がADHDの検査になります。 ADHDの診断には診察と併せて①質問用紙法による評価スケール②心理検査③身体の病気の検査などを必要に応じて実施していきます。 では次は診断した後の治療に関して説明していきたいと思います。

4.診断した後の治療に関して

ADHDの治療は心理社会的治療と薬物療法の2つが挙げられます。以下に詳しく説明してきますが、治療としてはまずは心理社会的治療を実施した上で生活の中で困りごとが多い場合に薬物療法が選択されます。ADHDと診断されたからと言ってすぐに薬物療法が選択されるわけではないことは知っておいていただけると幸いです。  
心理社会的療法というのはADHDの方が自分の行動の特徴を理解し、状況に応じた適切な行動をとれるようになるために行っていくもので①環境調整や②心理療法が挙げられます。
①環境調整として
日常生活の見直しとして以下のようなことを実施していきます。
■時間管理が難しい
携帯電話やスマートフォンのアラーム機能やスケジュール管理アプリを利用する。
家族や友人、同僚などに約束時間を知らせてもらう。
作業や勉強などと決まった時間するなどルーチン化して生活の中で習慣化する。   
■忘れ物やなくしものが多い
保管場所を固定する、必要なものは前日までに準備する習慣をつける。
必ず目に入る場所に持っていくものを置いておく。   
■ケアレスミスが多い
指示を受けるときにはメモや文章など残るもので残す、頭で考えるよりもできるだけ目で見て確認できる方法を使う。
毎日の業務を決めたやり方で決めた時間にするようにして抜けを減らす。  
②心理療法として
社会生活を送る上で快く受け入れられる行動、態度はどのようなものかを理解し、適切な行動をとることができるように対人関係の技能や社会のルールやマナーを学ぶソーシャルスキルトレーニングや認知行動療法などがあります。
また保護者の方へ向けての心理療法としてペアレントトレーニングがあります。ペアレントトレーニングとは保護者がADHDの子どもへの理解を深め、家族間の悪循環を減らし、より良い日常生活を送れるように具体的な対処法を習得するための心理療法になります。
具体的には保護者が子どもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための接し方や方法を学んでいく方法です。
③薬物療法
先ほど説明したようにADHDと診断されても日常生活で困りごとが少なければ、心理社会的療法を中心に治療を行っていきます。それでも生活上の支障が多かったり自尊心の低下が著しい、人間関係の悪化が目立つ、学力の低下が著しい場合などは薬物療法が選択肢に入ってきます。

5.まとめ

本日はADHDの診断に関して説明していきました。  
ADHDと診断されるにはADHDの診断基準を満たしておりそれが12歳以前より存在していること、またその発達凸凹があることで日常生活に支障を生じていることが必要になってきます。
そのため現在の症状やそれによる日々の生活の困りごとに加え、小さい頃や学生時代の話、周囲の方からの客観的な情報を聴取した上で、心理検査などの検査を実施します。
この記事の中ではどのような検査を実施するのかに関しても説明していきました。  
振り返りにはなりますが、当院では初回の診察から検査を通じてその方の特性をしっかりと把握した上でADHDの診断を行っていきます。
心理検査などを通じてその方の得意苦手を把握することで診断がついた後の支援に関してもより個々人に合わせたものを提供することが出来ると考えております。
この記事を読んで日々の生活の中でお困りの方、ご自身がADHDではないかと感じた方はお気軽に一度ご相談頂ければ幸いです。

2021.04.14

ADHDの子どもの日常~年代別の困りごとから診断治療まで~

こんにちは大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日はADHDの子どもの日常に関して説明していきたいと思います。

結論からいうとADHDの子どもが感じる困りごとは年代別に異なっているので、 その年齢や環境に合わせた視点をもって子どもの日常生活を観察していくことが重要になってきます。
この記事ではADHDがどのような病気か振り返った上で、その症状から日常の中でどういった困りごとが出るのかを年代別に解説していきます。
続けてADHDの診断、治療に関して説明していければと思います。
治療の項目ではどういったかかわり方や声掛けが有効かも説明していきますので参考にした頂ければ幸いです。

目次

1.ADHDとは

ADHD(注意欠如多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの特徴を主な症状として認める発達障害の1つです。
100人に5人程度見られると言われており、女児より男児に3~5倍と優位に多く認められることが知られています。
原因としては脳の機能異常によるものと考えられており、脳のネットワーク調整の不良により実行機能や報酬系、時間調節機能に障害があると言われています。
発達障害は子どもから大人になる過程で症状が改善する方もおられますが、基本的には生まれ持った特性なので継続していきます。 具体的には子どもは両親や学校の先生に「忘れ物やケアレスミスが多い、集中力が続かない。立ち歩きがある、ジッとすることが出来ない、口より手が出てしまう」などの困りごとを指摘されて受診される一方、大人の場合は「仕事でミスが多い、忘れ物が多い、整理整頓ができない」などの困りごとをご自身で訴えて受診される方が多い印象です。

2.ADHDの子どもの困りごと、年代別に分けて

ここではADHDの子どもの症状と困りごとを年代別にまとめていきます。

1)乳児期(0~1歳)

乳児期は夜泣きが多い、睡眠が不安定など振り返ってみると育てにくい子だったと言われることがあります。
しかしながらこの段階で診断をつけることは困難ですし、ADHDでないかと受診に来られる方はおられません。

2)幼児期(1~6歳)

小学校入学までの幼児期に関して症状と困りごとを挙げていきます。
幼児期の子どもは不注意に関して指摘されることはあまり目立ちません、敢えてあげるならすぐに他のことに注意が向いてしまうなど気が散りやすい、下記に記載する怪我や事故などとも重なりますが注意せずに飛び出してしまい事故や怪我をしてしまうなどが挙げられます。 多動に関してはじっとしていない、ずっと動き回っているといった特徴が挙げられるが、この年代の男児は活発で多動あることが多いためそこまで目立たない場合も多いです。
衝動性に関しては口より先に手が出てしまう、順番が待てないなど集団生活の中でトラブルが生じてくることがあります。
また衝動性や多動性、不注意すべての要因が関与しますが、擦り傷など怪我が多い、事故に遭ってしまう、迷子になってしまうことが多いなどの困りごとも目立ちます。
幼児期には上記のような困りごとが挙げられますが、保育園や幼稚園など集団生活の中で指摘されることが多いです。
診断に関しては上記にも記載したようにこの年代の男児は活発であり診断自体も難しいといった問題もあります。  

3)小学生年代

小学生になると幼児期と異なり色々と求められることが増えてくるので不注意の症状が目立ってくる子どもが多くなってきます。
不注意の症状の具体的な表れ方としては「教科書や宿題などの忘れ物が多い、授業中に話を聴くことが出来ない、テストなどでケアレスミスが多い」などが挙げられます。 多動性に関しては「授業中に立ち歩いてしまう、じっと座っておくことが難しい」などの症状で表れることが多いです。
こういった多動の症状は小学校低学年で顕著だったものが高学年になるにしたがって改善してくるケースも目立ちます。 衝動性に関しては「考えずに軽はずみな行動が目立つ、また授業中に思ったことをすぐに口に出してしまう」などの行動として表れてきます。
小学生時代は上記のような症状のため家でも学校でも注意されたり叱責されることが増えるため自信のなさ、つまり自己肯定感の低下につながりやすいため注意が必要です。

4)中高生年代

中高生年代、思春期の不注意症状としては「授業に集中が出来ない、テストのケアレスミスが多い、提出物を持っていけない、時間管理が苦手であったり計画が立てられない」などの困りごとがあります。こういった症状は学習面の困り感に直結するので注意が必要です。
多動性に関しては授業中の離席などは減ってくるものの、体の一部が常に動いているため落ち着きのない子と思われていることがあります。
衝動性に関しては「話を最後まで聞けずに行動に移してしまうことや、急に感情的になりキレてしまう、後先を考えない」などの行動に現れることがあります。 こういった衝動的な症状は反抗的、反社会的とみられることも多く自尊心の低下と相まって非行などにつながってしまうパターンも少なからず認めます。
また報酬系の問題からネット依存やゲーム依存のリスクも高いと言われています。  

5)大学生時代

大学生となるとよりそれまでと比較して自由度も高まり色々とできることも多くなる分、自己管理を要求される場面も多くそういった点で困り感が目立ってきます。
大学に入ると高校生までと違いクラス単位の授業が減り、選択制になることが多く履修届などの手続きや自己管理がより要求されるようになる。
その際ADHDの不注意症状があると出席が足りない、提出物が出せないなど色々な面で困りごとが出てくる。
多動性、衝動性に関しては落ち着きがない、気が移りやすくいろんなことに手をだしてしまうなどの行動としてあらわれます。   上記のようにADHDは各ライフステージごとに困りごとが変わっていくためその時々に応じて症状と併せて考えていくことが必要になってきます。

3.ADHDの診断、治療に関して

ADHDの診断と治療に関して説明していきます。

1)ADHDの診断

ADHDの診断に関しては「生まれてからこれまでの生育歴」と「現在の困りごと」や「診察室の様子」、「心理検査」などを通して総合的に行います。
診断のポイントとしては幼少期から症状は持続していること、家と学校など2つ以上の状況で症状を認めることが重要になってきます。
そのため学校の先生からの情報なども診断に必要なものとなってきます。
また「自閉スペクトラム症」「学習障害」など他の発達障害でも不注意などの症状が出ることがあるため他の発達障害が原因ではないか、また他の発達障害の併存に関しても注意して診断を行っていくことが重要です。 当院では診察を行った後、ご家族や学校の先生に「ADHD評価スケール」というチェックリストを記載して頂いた上で情報収集を行います。
その後、知能検査や人格検査などの心理検査を実施した上で診断を行っていく流れとなっています。

2)ADHDの治療

ADHDの治療は心理社会的治療と薬物療法の2つが挙げられます。 以下に詳しく説明してきますが、治療としてまずは心理社会的治療を実施した上で生活の中で困りごとが多い場合に薬物療法が選択されます。 ADHDと診断されたからと言ってすぐに薬物療法が選択されるわけではないことは知っておいてください。

1)心理社会的療法

心理社会的治療とはADHDに関しての正しい知識を知った上で家庭や学校での環境調整を行っていくこと、親の行動を変えることで子どもの行動に変化が期待できる「ペアレントトレーニング」や、子ども自身へ対する行動療法的なかかわりである「ソーシャルスキルトレーニング」などが挙げられます。 ADHDの診断がついた場合まず学校や家庭での環境調整を行っていきます。
また学校の先生と診断を共有してもらった上で現在の困りごとは本人の怠けのせいではなく、発達の凸凹のせいということであると理解してもらえるようにしていきます。
環境調整としては学校や家庭の環境や本人の困った行動が出る状況を具体的に把握することが重要になってきます。
具体的な環境を把握した上で本人にとってどのような環境調整が良いかを話し合っていくことが必要となってきます。
以下にR.バークレイによる「ADHDの子どもを育てるときの10の方針」はADHDの特性に応じたかかわり方の基本にはなっていくので参考にしていただければ幸いです。 基本は押さえた上で個々人に合った環境調整を実施していくことが重要になってきます。

ペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングとは保護者が子どもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための接し方や方法を学んでいく方法です。 よく行う説明として、まず子どもの行動を
①良い行動(増やしたい行動) 
②良くない行動(減らしたい行動) 
③危険な行動、人に迷惑かける行動(すぐ止めるべき行動) の3つに分けてあげます。
①に対しては褒める、ご褒美を与える、注目をする
②に対しては反応しない、無視をする。ただし良い行動が出ればすぐ褒めてあげましょう。
③に対しては警告して止めなければ、介入して止めさせます。終わったら水に流しましょう。 上記のかかわり方を行うことで子供は褒められことでうれしくなり、また良い行動をしたくなるという好循環が起こってきます。 人間が1日に行える行動は限りがあります。好ましい行動を増やせば、必然的に好ましくない行動は減っていきます。

2)薬物療法

薬物療法としては現在4種類の薬が使用可能であり薬理作用や内服回数、持続時間、副作用などが薬によって異なってきます。
以下にそれぞれの薬剤を説明していきます。
①コンサータ
コンサータはメチルフェニデートを主成分とする薬剤です。
脳内の神経伝達物質であるドパミンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、ドパミンとノルアドレナリンの量を増やし情報伝達を改善しADHDの症状である不注意や多動・衝動性を改善すると考えられています。
1日1回朝に内服し12時間効果が持続する薬剤になります。 効果の出るまでの時間も数日と即効性があり、内服しない日に効果はありません。
出現しやすい副作用としては食欲低下が挙げられます、食欲低下が原因で体重減少などが生じることもあります。
現在処方に当たって患者登録が必要になっています。
②ストラテラ
ストラテラは脳内の伝達物質であるノルアドレナリンの再取り込みを阻害することでADHDの症状である不注意や多動・衝動性を改善すると考えられています。
子どもの場合は1日2回内服し24時間効果が持続する薬剤になります。効果の出るまでの時間は1~2か月と少し時間がかかります。
出現しやすい副作用としては吐き気や頭痛などの症状が挙げられます。
③インチュニブ
メチルフェニデート及びアトモキセチンとは作用の仕組みが異なり、α2Aアドレナリン受容体という部分に作用する薬剤です。
脳の前頭前皮質の錐体細胞の後シナプスに存在するノルアドレナリン受容体であるα2A受容体を刺激することで、神経伝達の作用を改善しADHDの症状を改善すると考えられています。
1日1回内服する薬で24時間効果が持続します。効果の出る前の時間は1~2週間と言われています。出現しやすい副作用としては眠気や血圧低下が挙げられます。
④ビバンセ
ビバンセとはリスデキサンフェタミンを主成分とする薬でADHDの薬として6~18歳の小児を対象に2019年12月3日より販売が開始されました。
ビバンセはコンサータと同じく患者登録が必要になってきます。また他のADHD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用が可能という決まりがあります。
ビバンセは、神経と神経の間における神経伝達物質のドーパミンとノルアドレナリンの働きを高めてADHDの症状である不注意や多動・衝動性を改善すると考えられています。
1日1回朝に内服し12時間効果が持続する薬剤になります。
効果の出るまでの時間も数日と即効性があり、内服しない日に効果はありません。 出現しやすい副作用としては食欲低下や不眠が挙げられます、食欲低下が原因で体重減少などが生じることもあります。

以上がそれぞれの薬剤の特徴になります。
効果、持続時間、副作用など総合的に判断してその人に合った薬剤を決定していきます。
副作用に関しては薬剤を少量から開始して副作用が出現しないか観察していきます。 また一度薬剤を開始すると中止できないのではないかという質問を受けることがありますが、薬物療法に関しては症状を見ながら中止できるタイミングを考慮した上で相談をしていくことになります。
薬物療法をすることでご自身でも色々な工夫が可能となり薬を使用しなくても生活の中での困りごとが減る方も少なくありません。

4.まとめ

この記事ではの子どもの日常の困りごとに関して年代別にまとめていきました。
ADHDでは年代ごとに症状とその困りごとの現れ方が異なってきます。そのため年代に合わせて注意するポイントも異なってきます。
ADHDの子どもはその症状から日常生活の中での失敗体験を繰り返すことで自尊心の低下につながっていきます。子供の成長には自尊心が大事になっていきます、自尊心がしっかりと育っていくと失敗しても頑張ろうという気持ちがわいてきますが、自尊心が育ってないと失敗すると「どうせ自分なんて」と頑張れなくなってしまいます。
早い段階でADHDということに気付いてあげ適切な環境調整や支援、治療を行っていくことで自尊心を育てていくことは可能です。
また診断に至ったあとの治療に関しても心理社会的治療と薬物療法に関して説明していきました。治療としてまず環境調整も含めた心理社会的治療を行ったうえで、困り感が強い場合は薬物療法が選択肢に入ってきます。 適切なタイミングで薬物療法を実施することで症状の改善と困り感の軽減につながっていきます。
当院では子どもから大人まで経験豊富な医師が診察を行い、公認心理士により心理検査を実施した上でADHDの診断がつくのかどうか相談することが可能です。
ADHDの検査、治療を希望される方、また学校や家など生活上の困りごとに関してのご相談は大阪市城東区「鴫野駅」徒歩1分のけいクリニックまでお気軽にご相談ください。 

参考文献
1)注意欠如・多動症 –ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版:ADHDの診断・治療指針に関する研究会 斎藤万比古 編
2)児童精神科医が教える子どものこころQ&A70:姜昌勲 著

2021.03.28

ストレスコーピングとは?ストレスにうまく対処して生活しやすくするために

こんにちは大阪市城東区 鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です 皆さんはストレスコーピングという言葉をご存じでしょうか? 現在はストレス社会と言われており日々色々なストレスに晒され心や身体にも色々な影響が生じています。 「ストレスコーピング」とはストレスへうまく対処しようとすることを意味します。 本日のコラムではストレスコーピングに関して説明します。

具体的なやり方を学ぶことでストレスの基への対処に上手になり、心と身体の負担を減らし日々の生活を生きやすくしていきましょう。

目次

1.ストレスコーピングとは

ストレスコーピング理論はアメリカの心理学者ラザルスによって提唱された理論になります。ストレスコーピング(stress coping)直訳すると「ストレス対処法」で ストレスの基(ストレッサー)にうまく対処しようとすることになります。 ストレスの構成要因に関してもここでまとめておきます。

1.ストレッサー

ストレスの原因となるもので原因は様々です。

2.認知

ストレスに対してどのようなとらえ方をするかは人それぞれ違ってきます。

3.ストレス反応

ストレスに対し対応しきれなくなると体が様々な症状を起こします。 強いストレスを受け続けることは心身にとって様々な悪影響があるので、ストレスコーピングを行ってうまくストレスに対処することが必要になってきます。 ストレスコーピングを行う結果としてストレスによる心身の反応を起こしくくすることが可能になります。 またうつ病や統合失調症など精神疾患の発症には生まれ持った遺伝的な要因に加え、ストレスなどの外的な要因が影響します。 そのためストレスへの耐性や対処法を身につけておくことは予防にもつながります。 また高血圧や糖尿病などの身体疾患ともストレスは密接にかかわってくるため健康づくりのために上手なストレスとの付き合い方は重要と言ってよいでしょう。

2.ストレスコーピングの種類

ストレスコーピングには色々な種類があるので説明していきます。 ストレスコーピングは①問題焦点コーピングと②情動焦点コーピング③ストレス解消型コーピングという大きく3つの型に分けられます。

①問題焦点コーピング

ストレッサーそのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとする方法

②情動焦点コーピング

ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとする方法

③ストレス解消型コーピング

ストレッサーを感じたときではなく、感じてしまった後に、ストレスを身体の外へ追い出したり、発散させたりする方法です。 では以下に3つの型に関してさらに詳しくみていきましょう。

①問題焦点コーピング

ストレッサーそのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとする方法で 問題焦点型コーピングと社会支援検索型コーピングなどが挙げられます。 a.問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングは問題となっているストレッサーに対して直接働きかける方法になります。
例えばストレスを遠ざける、ストレスから離れるなどの方法です。
ただしストレスそのものに働きかけるので実行が難しいということが難点です。
〇具体例
例)仕事で業務量が多すぎてストレスを感じて来院した患者さんに対して問題焦点型コーピングをしてもらう場合
ストレッサーは仕事なのでそれに対して
1.仕事量を調整してもらう
2.仕事のやり方を見直して業務量の軽減を図る
3.一旦休職して仕事から離れるなど回避する
等の対応をすることが問題焦点型のコーピングになってきます

例)いじめがあり不登校になった患者さんに対して問題焦点型コーピングをしてもらう場合
いじめがストレッサーなので
1.いじめを担任や学校に相談して解決する。
2.一旦学校を休んでいじめと距離を取る。
等の対応をすることが問題焦点型のコーピングになってきます。

上記の様にストレッサーに対して直接働きかけるようなアプローチが問題焦点型コーピングになります。
社会的支援検索型コーピング
また問題に直面した時に周囲に助けを求める方法として社会的支援検索型コーピングというものもあり、問題焦点型コーピングの一種です。
問題を一人で抱え込まないようにすることで、ストレスを軽減します。
例えば上記の仕事量が多い場合などは上司や同僚、家族などに相談することが挙げられます。
またいじめの例の場合には先生や友人、両親に相談することがこのコーピングの方法となってきます。

②情動焦点コーピング

ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとする方法です。
これには情動処理型コーピングや認知再評価型コーピングが挙げられます。
a.情動処理型コーピング
情動処理型コーピングはストレッサーによって生じた悲しみや不安、怒りなどの感情を誰かに話すことなどで気持ちの整理や発散をする方法です。
ストレッサー自体を変化させることが難しい場合はそれを家族や友人、職場の同僚に話すことでストレッサーによって生じた不快な感情を処理していきます。自分の中にある感情を言語化することで整理もできますし、話すことによって発散することが期待できます。
また近しい人間に話すのを躊躇する場合などはカウンセリングや診察場面で感情を出すという手段も選択肢に入ってくるでしょう。
ストレスを感じている際に整理ができておらず何が原因か自分でも分からない場合があります。大人でもそういった方はおられますが、子どもの場合は自身の感情や気持ちを整理することが難しいことが多く誰かに話すことで感情の処理が可能になることはよくあることです。 b.認知的再評価型コーピング

認知再評価型コーピングはストレッサーに対する「認知」すなわち感じ方や捉え方を変化させることでストレスを軽減させる方法です。
落ち込んでいる時や余裕がない時はついつい些細なことでもネガティブに感じてしまいがちです。そういった時にはその出来事が起こったときに自分の頭に浮かんだ考えが妥当かどうか考えてみることで自分の認知のパターンに気付いていくことが可能になります。こういった時に次につながる現実的な別の考え方を導きさせれば気持ちが楽になってきます。
「他の人だったら、どんなアドバイスをしてくれるだろう」「もし元気な時の自分だったらどのように考えるだろう」など第3者の視点に立って考えてみるのもよいかもしれません。

〇具体例 仕事でミスをしてしまい上司から指摘を受けた際のことを例に挙げて考えてみましょう。
ミスをした際「上司からダメな部下だと思われた」「いつもミスばかりしてしまう」など不安な気持ちや悲しみの気持ちが出てきます。
ここでこの考えが妥当かどうか考えてみます。
「上司からダメな部下だと思われた」という考えは自分が感じたことなので、それが事実かどうかは分かりません。
また上司がミスを指摘してくれたおかげでミスがカバーできたことは良かったことでしょう。
また「いつもミスばかりしてしまう」という考えですが、本当にミスばかりしているのでしょうか?人間誰でもミスはあるものです。
一度ミスをすると次回からは同じようなミスをしないように気を付けれるものです。
次回から同じようなミスをしないようにすれば良いと考えられれば少し前向きになれるのではないでしょうか
実際にはこんなに簡単にはいかないかもしれませんが、こういった考え方が出来るかもしれないというのも事実です。
一人で考えるのが難しければ他人に相談してみても良いですし、専門の医師や心理士に相談するのもひとつの方法です。

③ストレス解消型コーピング

ストレッサーを感じたときではなく、感じてしまった後に、ストレスを身体の外へ追い出したり、発散させたりする方法です。
気晴らし型コーピングとは買い物をしたり美味しいものを食べるなど、自分の好きなことを行って気分転嫁を図ることでストレス解消を行う方法です。
これは普段私たちが起こっているストレス発散と呼ばれるものと同じような方法です。 これは比較的簡単に気分がリセットでき、ストレスを軽減する効果がありますが、ストレスの原因を根本的に解決することはできません。

3.ストレスコーピングを行う上で重要なこと

1.現在の状態を把握する

自身がおかれている状況を整理してそれを把握していくことは非常に重要になってきます。
非常に高いストレスに置かれた状況で人は正常な判断をすることが難しくなってきます。
実際は大きな問題でないことを必要以上に大きな問題ととらえてしまったり、逆に重要なことに対して対処できていないことがよくあります。
そのため現在の状態をしっかりと把握するために家族や友人、職場の同僚、上司などに相談し客観的な意見を聞いてみることが重要になってきます。
またそうやって問題を相談する中で自分自身の中での問題の整理にもつながっていきます。また身近な人に相談しにくい内容などに関しては私たち精神科医や臨床心理士に相談するのも1つの方法になります。より客観的な視点で問題の把握や、状態を理解するのに力になれるかと思います。

2.主体的に問題を解決していくという意思を持つ<

漠然と問題を向き合っているだけでは問題を解決していくことが難しくなることがあります。
自分自身で主体性を持って問題を解決していくのだという意思を持った上でストレスコーピングを行っていくという姿勢が問題解決に重要になってきます。 
またストレスコーピングを行っていくときにも今自分はどの方法を使ってストレスコーピングを行っているか意識することが大切です。
自分自身がしっかりと状況を把握し、自覚的にストレス対策を行うからこそストレスコーピングに効果が生まれるという事を覚えておいてください。

3.ストレスコーピングの種類を沢山もっておく

ストレスコーピングの種類は多ければ多いに越したことはありません。
ストレスコーピングの種類が多いと色々なストレス場面でその場に応じた対応を取ることが可能となってきます。
まず上記に示したストレスコーピングの中から実践しやすいものから試してみて、自分に合った方法を見つけていくといいでしょう。
また一度実践した時は効果があったかどうかを覚えておき、成功した場合は成功例として自分の中に蓄積していけるようにしましょう。
そういった成功体験を繰り返すことでストレスコーピングをすること自体が楽しくなり良い循環が生まれてきます。
ただし最初はうまくやろうと思わず色んな方法を試してみることも重要です。
数をこなしていくうちに段々と自分に合った方法や、この時はこういうパータンが取り組みやすいなど自分なりのストレスコーピングの型が出来てきます。
最初のうちは質より量をこなしてあげて意識的にストレスコーピングを行っていこうというくらいの姿勢が良いでしょう。

4.まとめ

今日はストレスコーピングに関してまとめていきました。
ストレスコーピングには色々な型があり、生活の中で自然と実践しているものもあれば、意識しないとなかなか難しいものまであるかと思います。
またストレスコーピングを実践するにはストレッサーを把握した上で自分の状態をしっかり知り、主体性をもって意識的に問題に対応していくことが重要になってきます。
現代はストレス社会で日常生活の中には人や物、環境など色々な種類のストレッサーがあります。
それに対してストレスを感じてしまうのはめずらしいことではなく、自然な反応です。しかしながらストレスとの付き合いを知らないまま過ごしていると心や身体に色々な悪影響が出るためしっかりと対応法を知ることが大切です。
多くの精神疾患もストレスが影響してきます、診察の中でもストレッサーとのかかわり方に関して相談されることは少なくありません。
上記のストレスコーピングの方法に関して診察の中で相談していくことも可能です。
ストレスのメカニズムを理解しストレスコーピングを実践していくことで心と身体の不調を予防していけるようにしましょう。

2021.03.14

うつ病になりやすい行動パターン うつ病を予防するためには?

こんにちは大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日はうつ病になりやすい行動パターンに関して説明していきます。
結論を先に伝えると、うつ病になりやすい行動パターンとしては乱れた生活習慣、またうつ状態の悪循環と呼ばれる思考と行動のパターンが挙げられると考えられます。
ではうつ病の説明を最初にした上で、うつ病になりやすい行動パターンとその行動パターンを変えていくための方法に関して説明していきます。

目次

1.うつ病とは

うつ病とは気分の落ち込みや、不眠、食欲の低下、集中力の低下、以前であれば楽しめていたことが楽しめないなど様々な症状を来すこころの病気です。
何か悲しいこと、不快な出来事があった際に気分の落ち込みが出る、やる気が出なくなるのは人間として正常な心の動きです。
しかしながらうつ病の場合は明らかな原因がないのに気分の落ち込みや気力の低下などの抑うつ症状が持続したり、明らかなきっかけがあったとしてもそれが原因で起こると考えられる以上の強い症状が出現し、その結果日常生活に支障生じるといったことが起こります。
うつ病になる因子としては大きなストレスや睡眠不足や過労、性格や考え方、それに加えて生まれ持った遺伝的な要素など様々な要因が組み合わさってうつ病が発症すると考えられています。
上記の色々な要因が組み合わさった結果、脳内のセロトニンやドパミンなど神経伝達物質の機能低下が関与していると考えられています。

2.うつ病になりやすい行動、考え方のパターン

うつ病になりやすい行動、考え方のパターンを考えるにあたってうつ病になる原因を振り返っていきましょう。
うつ病になる原因としてはストレス、睡眠不足や過労などの生活習慣によるもの、また性格や考え方それに加えて生まれ持った遺伝的な要素など様々な要因が挙げられます。
・うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすいと言われている典型的な性格傾向がありメランコリー親和型と呼ばれる性格傾向があります。
この性格は真面目で責任感が強く、几帳面で秩序を重んじる、周囲に気を使いすぎるなどの特徴があります。このような性格の方は総じて仕事も出来て、周りからの評価も高く頼りにされます。
そういった一方で柔軟性に欠け、自責的であったり、一人で何でも抱え込もうとするためうつ病になりやすいといった傾向があると言われています。
また、最近は上記のメランコリー親和型と呼ばれる性格と異なり、自己中心的、依存的、何か起こった際に周囲のせいにするなど他責的、繊細で傷つきやすいなどの性格傾向を持つ人のうつ病が散見されるようになり、そういった性格傾向をもったうつ病を新型うつ病と呼ばれることもあります。
・うつ病になりやすい生活習慣
うつ病と生活習慣には密接な関係があると言われております。
うつ病にかかりにくい生活として
①十分な休養
3食の食事摂取、過度な飲酒を避ける、定期的な運動などの健康的な生活
③楽しみや、くつろぎの時間を大切にすること
などが重要であると言われています。
そのためうつ病になりやすい生活習慣として普段から無理をしており休みの日も十分な休養を取らず、常にエネルギーが不足した状態は続いている。
食事は不規則で食事内容も偏っており、過度な飲酒を繰り返し、運動不足な状態が続いている。
自分なりの趣味や楽しみがなく、くつろぐ時間が取れない。
等の行動がうつ病になりやすい生活習慣であると考えて良いでしょう。
こうやって考えてみると働き盛りの社会人の方は上記のような生活に当てはまる人が多いのではないでしょうか?
・うつ病になりやすい思考、行動のパターン
うつ状態となっているときに陥りやすいパターンとして気分と思考、行動が悪循環となっていると言われています。
下記の図のようにうつ気分が、うつ思考とうつ的な行動を起こしさらにそれがうつ気分を悪化されるといううつ状態の悪循環を形成しています。


うつ状態の時に起こる思考のパターンとしてはマイナス思考のパターンが起こりやすいと言われています。
人は悩みがあるときやうつ状態のときには現実に目を向けられなくなっていきます。
何かに失敗したときに「いつもこうなんだ」「何をやってもだめなんだ」と考えたりしないでしょうか。今失敗したのに「いつも」と考えてしまったり、あることを失敗したのに「何をやっても」と考えると失敗ばかりしているように思えてきます。
そういった時に私たちは現実をしっかり検討せず、こうした言葉をつかって自分にマイナス暗示をかけていることがよくあります。
マイナス思考のパターンとしては自分に対すること、周囲に関すること、また未来に関することが挙げられます。
この3つの否定的な思考を認知行動療法の創始者アーロンベック先生は「否定的認知の3徴」と呼んでいます。

1.自分に関するマイナスパターン

自分はダメな人間だ、まだこれだけしかできていない、全然うまくできていない。
自分を過度に責めてしまう。
2.周囲に関するマイナスパターン
十分に考えず、失敗だと決めつける。
周りのことに対して被害的になってしまう。
3.未来のことに関するマイナスパターン
結局うまくいかないだろうとあきらめてしまう。
現状が変わらないと思い込む。うつ状態の時の考え方としては上記のようなマイナス思考のパターンが起こりやすく、実際にはそうでないことをマイナスに考えこんでしまうことが多いと言われています。そういったマイナスパターンの思考がさらにうつ状態を悪化させていきます。
またうつ状態の時の行動パターンとしては活動量が減って楽しいことや、達成感が得られないため元気になるもとも減ってしまいます。
まや先延ばしにすることで結局すうべきことがたまってしまい気分の落ち込みの原因となってしまいます。
上記に加え周囲に助けを求めることができないためなどの行動も挙げられます。

3.行動パターンや認知のパターンを変化させていくためには

・生活習慣の改善

行動パターンに関してはまずは以下のような生活習慣に整えていくことが重要だと言えるでしょう。
①十分な休養
3食の食事摂取、過度な飲酒を避ける、定期的な運動などの健康的な生活
③楽しみや、くつろぎの時間を大切にすること

しかしながら目標を挙げるだけで生活習慣が改善できれば苦労しないという方も多いでしょう。
なのでまず生活習慣を改善するためにはその方のモチベーションの段階に応じてもアプローチの仕方が変わってきます。
①例えば自分の生活習慣が問題だとは思っていない人
②問題意識は芽生えているが、生活習慣を変えようとはしていない人
③生活習慣を変えないといけないと考えている人
④生活習慣を変えて行動に移している人
上記の認識の段階に合わせて必要なアプローチを使っていくことは生活習慣の改善に役立つでしょう。これは動機付け面接といった手法をつかったアプローチになっていきます。
もちろん色んなアプローチはありますが、その方それぞれの現状を把握した上で生活習慣を変化させていくことはうつ病の予防に効果的であると言えるでしょう。

・認知、行動パターンの改善方法
認知、行動のパターンに関しては認知行動療法など適切な思考パターンを行っていくことが重要になってきます。
認知行動療法というと難しい方法のように感じるかもしれませんが、私たちは毎日の色々なストレスに対してそれを上手にかわしたり、生かしたりして生活しています。その対応は人それぞれパターンがありますが、上手にストレスをかわせる人もいれば、ストレスをそのまま受け止めてしまいしんどくなってしまうような人もいます。
しかしながらストレスに対応するパターンというのは意識をすることで身に着けていくことが可能です。
こういったパターンを意識して使っていくことで毎日の生活が良い方向に変わっていきます。認知行動療法はこういったストレスへの対応のパターンを身につけていくものになってきます。

4.まとめ

うつ病になりやすい行動パターンとして今日は①生活習慣と②考え方、行動のパターンの2つの面から考えていきました。
うつ病になりやすい行動パターンを知りそれを改善していくことはうつ病の予防につながっていきます。また現在うつ病にかかっている方も症状の改善や病気の再発予防に役立つでしょう。
今回取り上げた動機付け面接や認知行動療法の手法を取り入れた診察やカウンセリングなどを当院では実施しております。
この記事を読んで治療に興味のある方は是非一度気軽にご相談ください。

参考文献
うつ病の認知療法・認知行動療法 「精神療法の実施方法と有用性に対する研究」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

2021.02.26

統合失調症になりやすい人とは?

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は統合失調症になりやすい人に関して説明していきます。

統合失調症になりやすい人というのは一言でいうのは難しく、さまざまな遺伝や性格、環境因など要因が関与しています。
しかしながらストレスとのうまい付き合い方を身に着けることは統合失調症になりにくくすることに役立つとは考えられます。
以下に詳しく見ていきましょう。

目次

1.統合失調症とは

統合失調症とはうつ病や双極性障害、不安障害と同様に精神疾患の一つです。
およそ100人に1人の割合で発症するといわれており、男女比はほぼ同数で発症年齢は10代後半から30代頃までが最も多いといわれています。
この病気は脳の病気で、さまざまな刺激を伝え合う神経のネットワークにトラブルが生じることで起こる脳の機能障害によって起こります。
近年、病気に対する研究の進歩、さまざまな治療薬の開発により、この病気の治療は飛躍的に進歩しています。
この病気にかかっても、早期に専門医の適切な治療を受ければ、多くの患者さんは社会生活に復帰することができます。

 

 

2.統合失調症の原因

統合失調症の発症はストレス脆弱性モデルというものが提唱されています。
このストレス脆弱性モデルというのはもともとストレスに弱い素因を持っており、それに色々なストレスがかかることで発症するという仮説です。

このもともとストレスに弱い素因というものに遺伝などがかかわっていると言われています。というのも近親者に統合失調症の方がいると罹患率が上がったり、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも発症する可能性が高いためです。

しかしながら全く同じ遺伝子を持っている一卵性双生児であっても共に統合失調症にかかる割合は49%と言われています。そのため遺伝だけではなく環境因やストレス因などが関与すると考えられています。

また統合失調症の人には一定の性格傾向があると言われております。その性格とはおとなしい、素直、内気、控えめ、人と付き合うのが苦手、傷つきやすいなどの気質です。これらはすべての人に当てはまるわけではありませんが、統合失調症の発症に影響があるのではないかと考えられています。

加えて出生前の母親の感染症や栄養不良や胎児の低酸素状態も発症の原因になると報告されており。授精時点の父親が高齢であることも統合失調症の発症リスクを高めることが知られています。しかしながらこれらがあったからといって必ずしも統合失調症を発症するというわけではなく周産期のイベントは危険因子の1つでしかありません。

上に挙げた生まれ持った素因に日常生活の中でのストレスや、転校・転居・離婚など環境の変化のような社会的な要因が加わり統合失調症が発症すると考えられています。

3.統合失調症になりやすい人とは

上記より統合失調症にかかる原因として生まれながらの様々な素因とストレスの大きさが関係していると考えられます

ストレスの大きさというのはストレス自身の大きさとそれを受け止める人のストレスに対する耐性で定義してみるとわかりやすいかもしれません。
すなわち同じストレスがあってもストレスに敏感すぎる人はそれによって心のバランスを崩した結果、さまざまな不調を起こしやすく、ストレスに対して上手に対処する方法を身に着けている人は心のバランスを崩しにくく心も体も大きな影響を受けることが少ないと考えられます。

 

したがってストレスの軽減やストレスとの上手な付き合い方を身につけて行くことは統合失調症をはじめ様々なこころの病気の予防につながると考えて良いでしょう。
ストレスとのうまい付き合い方「ストレスコーピング」に関してはまた別記事で説明していきます。

統合失調症になりやすい人とは遺伝負因や一定の性格傾向、周産期のイベントがあった方、また大きなストレスに暴露されている人やストレス耐性が弱い人といってもよいかもしれません。ただし上記の要因がすべてあったとしても必ずしも統合失調所が発症するというわけではないのでその点は注意してください。

また発症しても現在は治療の技術が進歩しており早期に治療することで社会生活を送ってる患者さまも沢山おられます。早期発見、早期治療と継続した治療をすることが重要になってきます。

2021.02.16

なぜ睡眠時無呼吸症候群の治療をすることで精神症状が良くなるのか?

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は睡眠時無呼吸症候群と精神疾患の関係について説明していきます。

結論から言うと睡眠時無呼吸症候群の治療をすることで精神症状の改善は期待できます。
というのも精神科の病気で治療されている方は睡眠時無呼吸症候群を合併している方が多く、適切な治療を受けていない方が多くいます。
そういった方が睡眠時無呼吸症候群の治療をすることで精神症状の改善の他にも色々な効果が期待できると言われています。

ではどうして精神科に通院中の方で睡眠時無呼吸症候群の方が多いのか、また治療をすることでどういったことが期待できるのかということに関して詳しく説明していきます。

目次

1.睡眠時無呼吸症候群とは夜間にいびきを起こすことで日中の眠気を起こす病気

ここでは睡眠時無呼吸症候群に関して簡単に説明していきます。 睡眠時無呼吸症候をご存じの方は読み飛ばしていただいて結構です。
睡眠中に10秒以上の無呼吸状態が1時間に5回以上起こることで熟眠が出来ず、日中に眠気を起こす状態を睡眠時無呼吸症候群といいます。
またその無呼吸には大きないびきを伴うことが多いと言われています。 日本にもおよそ200万人の患者がいると言われており成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。 その200万人の患者の中で治療を受けているのは15万人と患者数に比べて治療されている人数が少ないことから「隠れ睡眠時無呼吸症候群」の方が多いということも知られています。
日中の眠気や集中力の低下、熟眠感がないなどの症状がある方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかもしれません。
詳しい解説はこちら

2.精神疾患をもっている人は睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクが高い

精神疾患をもっている人は睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクが、そうでない方と比べて優位に高いというデータがあります。

以下に詳しくみていきましょう。

統合失調症やうつ病の人が睡眠時無呼吸症候群の有病率が約40%であったことと比べて、そうでない方の有病率が6.2%であったという報告や、海外のデータでうつ病と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人で睡眠時無呼吸症候群を合併している確率が優位に高かったという報告もあります。
また国内の睡眠時無呼吸症候群の患者における精神疾患の有病率は27%であり、全人口の精神疾患の有病率10%と比較して2.7倍と高いことが報告されています。

ではなぜ上記のようなことが起こるのか?ということを、精神疾患と睡眠時無呼吸症候群の関係と併せて説明していきます。
睡眠時無呼吸症候群のリスク因子として高血圧や糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病があることが知られています。
また精神疾患にかかっている人は生活習慣病にかかりやすいことが知られております。 すなわち精神疾患にかかっている人は生活習慣病になりやすいため、精神疾患は睡眠時無呼吸症候群のリスク因子をもっている可能性が高いため睡眠時無呼吸症候群を合併しやすいことが分かります。
それ以外に精神疾患における中枢神経系の変化が睡眠時無呼吸症候群の原因になることも知られています。
例えばうつ病では脳内のセロトニン機能だけでなく頸部の筋肉に作用するセロトニンの機能も低下しているため筋緊張の低下が起こり睡眠時無呼吸症候群を発症すると言われています。

また他の原因としては精神疾患の治療薬による影響も考えられます。
例えば抗精神病薬の副作用としての代謝異常や体重増加や、睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤による筋弛緩作用によって気道が狭くなることも原因として考えられます。

上記のような原因で精神疾患をもっている人は睡眠時無呼吸症候群にかかる危険性が高いと言えるでしょう。

3.精神疾患の治療において睡眠時無呼吸症候群の有無は非常に重要

ここでは睡眠時無呼吸症候群の治療と精神症状の関係やその結果得られるメリットなどに関して説明していきます。
※以下の睡眠時無呼吸症候群の治療は主にCPAP(持続陽圧呼吸療法)です。具体的には寝ているときに鼻にマスクを装着し、空気を送り込んで気道の閉塞を防ぐことにより、睡眠時無呼吸を予防する治療法です。

様々な研究の結果から、精神疾患にかかっており睡眠時無呼吸症候群を合併している方に睡眠時無呼吸症候群の治療を実施することで精神症状の改善を認めたという報告がされています。
例えば難治性のうつ病として治療されていた方が睡眠時無呼吸症候群の治療をしたことでうつ症状の改善を認めた例や、睡眠時無呼吸症候群を見逃されており薬剤性の認知機能低下を来していた高齢者の例なども報告されています。また心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者に対し治療を行ったことで悪夢などPTSDの症状が改善したというデータもあります。

海外の論文でも精神疾患の治療をする上で睡眠時無呼吸症候群の合併に注意をして治療にあたることが重要であると言われています。その理由として睡眠時無呼吸症候群は慢性的な睡眠中の低酸素を起こす原因となり、その結果中途覚醒や熟眠感の低下など睡眠状態の悪化につながります。睡眠状態が悪くなると精神症状は悪化するため、睡眠時無呼吸症候群は精神症状の悪化の原因になるということです。

またCPAPによる治療によって症状が改善することで薬の量を減らせるという結果も出ており、睡眠時無呼吸症候群の治療により減薬も可能になると考えられています。

上記の理由から精神疾患の治療を実施するうえでいびきの有無や日中の眠気などの睡眠時無呼吸症候群に関連する症状の聴取をすること、また必要に応じて検査を行っていくことは非常に重要であると考えられる。加えて睡眠時無呼吸症候群の治療を実施することで精神症状の改善や減薬にもつながることが期待できると考えられます。

4.まとめ

睡眠時無呼吸症候群というのは夜間に無呼吸を頻回に起こすことで熟眠感の低下や日中の眠気を起こす病気で、およそ200万人の患者がいると言われていますが治療をうけているのはそのうち50万人程度で診断を受けていない「隠れ睡眠時無呼吸症候群」の患者も多いと言われています。
精神疾患にかかっている患者さんは生活習慣病のリスクも高く、また内服している薬剤の影響などもあり睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクも大きいことが知られています。 また睡眠時無呼吸症候群の治療をすることで精神症状の改善も期待が出来るし、内服している薬剤の量も減量することが可能であると言われています。

もし精神科に通院されている方でいびきが大きい、寝ているときに呼吸が止まっている、日中の眠気が強い、集中力の低下があるなどの症状がある方は一度相談頂ければと思います。 当院では自宅でできる簡易検査も実施しており検査から診断、治療が可能となっております。

参考文献
1)Obstructive Sleep Apnea and Psychiatric Disorders: A Systematic Review Madhulika A. Gupta, MD, FAASM, Fiona C. Simpson, HBSc February 15, 2015 https://doi.org/10.5664/jcsm.4466
2)内村直尚 精神疾患と睡眠時無呼吸症候群-精神経誌(2010)112巻9号
3)宮崎総一郎 小林隆一 北村拓郎 睡眠時無呼吸症候群診療のピットフォール 耳展 54:10~18,2011

2021.02.09

発達障害かどうか気になる方へ「軽度の自閉スペクトラム症」とは?

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。今日は軽度の自閉スペクトラム症に関して説明していきます。

結論を先に伝えると、軽度の自閉スぺクラム症とは
特性は弱いが、生活障害があるため自閉スペクトラム症と診断される方。また自閉スペクトラム症の特性はあるが環境調整がうまくいっており生活障害がない方と考えます。
では以下に具体的な例も挙げた上で詳しく説明していきます。

 

 

自閉スペクトラム症とは

自閉スペクトラム症とは以前は広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群などと飛ばれていた疾患群を含む概念になります。「スペクトラムSpectrum」というのは英語で「連続している」という意味で、発達障害の特性が弱いものから強いものまで連続性をもっているという概念になっています。
分かりやすく図で説明すると下図のように自閉スペクトラムの特性の強弱は連続性があり、右にいけばいくほど発達障害の特徴を強く持っているということになります。

 

 

自閉スペクトラム症の診断

現在の自閉スペクトラム症の診断基準としてa.社会性コミュニケーションの障害b.限局的反復的な行動パターンといった2つの領域の症状があります。その2つの症状を満たしており、それが社会生活上で支障がある際に診断がつけられます。 誰しも得意苦手はありますが、その特性の凸凹が強い状態を発達凸凹と呼ぶとしましょう。発達凸凹があるが社会生活で困りごとがない場合診断が必要ない場合もあるでしょう。 すなわち発達凸凹+生活障害=発達障害と考えてよいかと思います。

 

軽度の自閉スペクトラム症の具体例

では以下に例を挙げてみていきましょう。
ここにAさんとBさんがいたとします。
AさんとBさんの発達障害の特性は図の位置くらいとします。

Aさんは対人関係やコミュニケーションが苦手で、一つのことにこだわると変更が難しいといった自閉スペクトラム症の特性を持っています。
しかしながら、こだわりを生かし研究員として日々仕事に取組み周囲にも理解されながら生活を送っています。
BさんはAさんと比べると弱いものの自閉スペクトラム症の特性を持っています。しかしながら接客業で働いておりコミュニケーションや臨機応変な対応を求められ日々困りごとが絶えません。

上記の例はやや極端かもしれませんが実際にあっても不思議ではないケースと考えられます。
すなわち、Aさんの方がBさんに比べて発達障害特性は強いものの Aさんは発達障害の特性が強いが周囲の環境が本人の特性と合っており生活に支障がない方 ⇒自閉スペクトラム症と診断しない、もしくはしなくても良い。
Bさんは発達障害の特性はAさんより強くないが日常生活で支障がある ⇒自閉スペクトラム症と診断する。
ということが起こってきます。
上記のようなことは実際の診察場面でも起こりえます。
それを分かりやすく図に表すと現在の診断の考え方というのは下図のような考え方になってきます。

 

 

まとめ「軽度の自閉スペクトラム症」とは?診断と治療に関して

すなわち軽度の自閉スペクトラム症の方というのは発達障害特性がそこまで強くないが生活に支障があるかた、もしくは発達障害特性はあるが環境がうまく合っているため生活の支障が少ない方で、さっきの例にあげたAさんやBさんのような方が軽度の自閉スペクトラム症と言えるでしょう。
ここで注意すべき点としては上に挙げたBさんのような方も自身の特性を知り周囲の環境調整をすることで生活上の困りごとを少なくすることは可能です。
またAさんが今後環境の変化で周囲に適応出来なくなり生活に支障が起こってくることも考えられます。
発達障害の治療で重要なことは診断の「あるなし」ではなく、診断を受けた上で自分の得意苦手を知り今後の生活に生かしていくことなのです。
発達障害を診断するには患者さまご本人からの情報だけでなく幼少期や学生時代などの困りごとや家族や配偶者の方からの客観的な情報も非常に重要になってきます。

そういった情報を参考に医師による診察とWAISやWISCなどといった発達検査を実施することで発達障害の診断を行っていくことになります。
当院では子どもから大人まで経験豊富な医師が診察を行い、公認心理士により心理検査を実施した上で発達障害の診断がつくのかどうか相談することが可能です。
子どもから大人まで発達障害の検査を希望される方、また学校や職場など生活上の困りごとに関してのご相談は大阪市城東区「鴫野駅」徒歩1分のけいクリニックまでお気軽にご相談ください。

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