コラム

2021.03.14

うつ病になりやすい行動パターン うつ病を予防するためには?

こんにちは大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日はうつ病になりやすい行動パターンに関して説明していきます。
結論を先に伝えると、うつ病になりやすい行動パターンとしては乱れた生活習慣、またうつ状態の悪循環と呼ばれる思考と行動のパターンが挙げられると考えられます。
ではうつ病の説明を最初にした上で、うつ病になりやすい行動パターンとその行動パターンを変えていくための方法に関して説明していきます。

目次

1.うつ病とは

うつ病とは気分の落ち込みや、不眠、食欲の低下、集中力の低下、以前であれば楽しめていたことが楽しめないなど様々な症状を来すこころの病気です。
何か悲しいこと、不快な出来事があった際に気分の落ち込みが出る、やる気が出なくなるのは人間として正常な心の動きです。
しかしながらうつ病の場合は明らかな原因がないのに気分の落ち込みや気力の低下などの抑うつ症状が持続したり、明らかなきっかけがあったとしてもそれが原因で起こると考えられる以上の強い症状が出現し、その結果日常生活に支障生じるといったことが起こります。
うつ病になる因子としては大きなストレスや睡眠不足や過労、性格や考え方、それに加えて生まれ持った遺伝的な要素など様々な要因が組み合わさってうつ病が発症すると考えられています。
上記の色々な要因が組み合わさった結果、脳内のセロトニンやドパミンなど神経伝達物質の機能低下が関与していると考えられています。

2.うつ病になりやすい行動、考え方のパターン

うつ病になりやすい行動、考え方のパターンを考えるにあたってうつ病になる原因を振り返っていきましょう。
うつ病になる原因としてはストレス、睡眠不足や過労などの生活習慣によるもの、また性格や考え方それに加えて生まれ持った遺伝的な要素など様々な要因が挙げられます。
・うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすいと言われている典型的な性格傾向がありメランコリー親和型と呼ばれる性格傾向があります。
この性格は真面目で責任感が強く、几帳面で秩序を重んじる、周囲に気を使いすぎるなどの特徴があります。このような性格の方は総じて仕事も出来て、周りからの評価も高く頼りにされます。
そういった一方で柔軟性に欠け、自責的であったり、一人で何でも抱え込もうとするためうつ病になりやすいといった傾向があると言われています。
また、最近は上記のメランコリー親和型と呼ばれる性格と異なり、自己中心的、依存的、何か起こった際に周囲のせいにするなど他責的、繊細で傷つきやすいなどの性格傾向を持つ人のうつ病が散見されるようになり、そういった性格傾向をもったうつ病を新型うつ病と呼ばれることもあります。
・うつ病になりやすい生活習慣
うつ病と生活習慣には密接な関係があると言われております。
うつ病にかかりにくい生活として
①十分な休養
3食の食事摂取、過度な飲酒を避ける、定期的な運動などの健康的な生活
③楽しみや、くつろぎの時間を大切にすること
などが重要であると言われています。
そのためうつ病になりやすい生活習慣として普段から無理をしており休みの日も十分な休養を取らず、常にエネルギーが不足した状態は続いている。
食事は不規則で食事内容も偏っており、過度な飲酒を繰り返し、運動不足な状態が続いている。
自分なりの趣味や楽しみがなく、くつろぐ時間が取れない。
等の行動がうつ病になりやすい生活習慣であると考えて良いでしょう。
こうやって考えてみると働き盛りの社会人の方は上記のような生活に当てはまる人が多いのではないでしょうか?
・うつ病になりやすい思考、行動のパターン
うつ状態となっているときに陥りやすいパターンとして気分と思考、行動が悪循環となっていると言われています。
下記の図のようにうつ気分が、うつ思考とうつ的な行動を起こしさらにそれがうつ気分を悪化されるといううつ状態の悪循環を形成しています。


うつ状態の時に起こる思考のパターンとしてはマイナス思考のパターンが起こりやすいと言われています。
人は悩みがあるときやうつ状態のときには現実に目を向けられなくなっていきます。
何かに失敗したときに「いつもこうなんだ」「何をやってもだめなんだ」と考えたりしないでしょうか。今失敗したのに「いつも」と考えてしまったり、あることを失敗したのに「何をやっても」と考えると失敗ばかりしているように思えてきます。
そういった時に私たちは現実をしっかり検討せず、こうした言葉をつかって自分にマイナス暗示をかけていることがよくあります。
マイナス思考のパターンとしては自分に対すること、周囲に関すること、また未来に関することが挙げられます。
この3つの否定的な思考を認知行動療法の創始者アーロンベック先生は「否定的認知の3徴」と呼んでいます。

1.自分に関するマイナスパターン

自分はダメな人間だ、まだこれだけしかできていない、全然うまくできていない。
自分を過度に責めてしまう。
2.周囲に関するマイナスパターン
十分に考えず、失敗だと決めつける。
周りのことに対して被害的になってしまう。
3.未来のことに関するマイナスパターン
結局うまくいかないだろうとあきらめてしまう。
現状が変わらないと思い込む。うつ状態の時の考え方としては上記のようなマイナス思考のパターンが起こりやすく、実際にはそうでないことをマイナスに考えこんでしまうことが多いと言われています。そういったマイナスパターンの思考がさらにうつ状態を悪化させていきます。
またうつ状態の時の行動パターンとしては活動量が減って楽しいことや、達成感が得られないため元気になるもとも減ってしまいます。
まや先延ばしにすることで結局すうべきことがたまってしまい気分の落ち込みの原因となってしまいます。
上記に加え周囲に助けを求めることができないためなどの行動も挙げられます。

3.行動パターンや認知のパターンを変化させていくためには

・生活習慣の改善

行動パターンに関してはまずは以下のような生活習慣に整えていくことが重要だと言えるでしょう。
①十分な休養
3食の食事摂取、過度な飲酒を避ける、定期的な運動などの健康的な生活
③楽しみや、くつろぎの時間を大切にすること

しかしながら目標を挙げるだけで生活習慣が改善できれば苦労しないという方も多いでしょう。
なのでまず生活習慣を改善するためにはその方のモチベーションの段階に応じてもアプローチの仕方が変わってきます。
①例えば自分の生活習慣が問題だとは思っていない人
②問題意識は芽生えているが、生活習慣を変えようとはしていない人
③生活習慣を変えないといけないと考えている人
④生活習慣を変えて行動に移している人
上記の認識の段階に合わせて必要なアプローチを使っていくことは生活習慣の改善に役立つでしょう。これは動機付け面接といった手法をつかったアプローチになっていきます。
もちろん色んなアプローチはありますが、その方それぞれの現状を把握した上で生活習慣を変化させていくことはうつ病の予防に効果的であると言えるでしょう。

・認知、行動パターンの改善方法
認知、行動のパターンに関しては認知行動療法など適切な思考パターンを行っていくことが重要になってきます。
認知行動療法というと難しい方法のように感じるかもしれませんが、私たちは毎日の色々なストレスに対してそれを上手にかわしたり、生かしたりして生活しています。その対応は人それぞれパターンがありますが、上手にストレスをかわせる人もいれば、ストレスをそのまま受け止めてしまいしんどくなってしまうような人もいます。
しかしながらストレスに対応するパターンというのは意識をすることで身に着けていくことが可能です。
こういったパターンを意識して使っていくことで毎日の生活が良い方向に変わっていきます。認知行動療法はこういったストレスへの対応のパターンを身につけていくものになってきます。

4.まとめ

うつ病になりやすい行動パターンとして今日は①生活習慣と②考え方、行動のパターンの2つの面から考えていきました。
うつ病になりやすい行動パターンを知りそれを改善していくことはうつ病の予防につながっていきます。また現在うつ病にかかっている方も症状の改善や病気の再発予防に役立つでしょう。
今回取り上げた動機付け面接や認知行動療法の手法を取り入れた診察やカウンセリングなどを当院では実施しております。
この記事を読んで治療に興味のある方は是非一度気軽にご相談ください。

参考文献
うつ病の認知療法・認知行動療法 「精神療法の実施方法と有用性に対する研究」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf