コラム

2021.08.09

子どもの問題行動とその対応について

こんにちは!!大阪市城東区鴫野駅から1分「けいクリニック」院長、精神科専門医の山下圭一です。
今日は子供の問題行動とその対応に関して説明していきます。

まず結論からいうと
問題行動がおこるのには原因と理由があるということ。その行動がなぜ起こっているのかを考える際に応用行動分析という考え方が役に立つということです。
では以下に詳しく見ていきましょう。

目次

1.子どもの問題行動が起こる原因

子どもの問題行動が起こるとき理由がすぐわかるときもあれば、理由がよく分からない時もあるかと思います。
子ども自身が理由を教えてくれたり、なかなか喋ってくれない時、また子ども自身も理由が分からない時もあるかもしれません。
このような時はまず何かしらの理由があって問題行動が起こっていると考えていく姿勢が大事になってきます。(明確な理由が分からない場合もあるのですが…考えるという姿勢が重要です)

例えば座っていられず、すぐ立ち上がったり、教室から飛び出す子どもがいる場合

「どうして」その行動が起こっているのか考えていきます。
この時にその「どうして」というのには2つの意味があります。
①1つはどういう原因で?
例えば発達障害などの基礎疾患がありじっとすることが苦手なのかもしれません。

②もう1つはどういう理由で?これは人のふるまいには理由があるということです。
例えば教室で座っていられない子どもは先生の話がつまらないかもしれないし、勉強が分からないかもしれません。

こういった2つの「どうして」から問題を考えていくことは子どもの行動を考えていくうえで重要になってきます。
また問題行動が起こった際に何が原因か考えていく際に有用な理論として応用行動分析という考え方が役に立ちます。
次の章では応用行動分析に関して説明していきます。

2.応用行動分析とは

応用行動分析 ABA(Applied Behavior Analysis)というのはすべての人間に共通する行動の基本原理に基づいて子どもの行動を理解し問題行動を減らし、適切な行動を増やす働きかけを行っていくことを目的に考えられた考え方になります。

 ABAの基本原理として「なぜその行動が起きているのか考える」ということが基本的な考え方の枠組みになります。
ABAでは行動を理解する際にまず「ABCフレーム」で行動を見ていきます。
AAntecedent「先行事象」、BBehavior「行動」、CConsequence「後続事象」を表します。これを以下の図のような形である行動の前後でどのような事象が起きているのか、それがその行動にどう影響しているのかを細かく見ていきます。

・強化
BCには一定の法則がありこれを強化の原理といいます。
ある行動を起こしたときに、その行動に引き続いて起きた出来事によりその行動がもっと起こるようになるか、あまり起きなくなるかということが決まってくるという考え方になります。 

例えば男の子が家で家事のお手伝いをするとお母さんが褒めてくれました。男の子がうれしくなって、自分からお手伝いをすることが増えました。
お手伝いという行動を褒めるという後続事象によって強化したことでお手伝いをすることが増えたという事になります。

・消去
人は何らかの行動の後にほうびとなる出来事が与えられないとその行動が減っていきます、これを消去と言います。
例えばお手伝いをしてくれる男の子に対してお母さんは初めは褒めていたのですが、だんだん褒めてくれなくなったとします。そうすると、男の子は段々とお手伝いをしなくなってきます。
これが消去です。お手伝いという行動が褒めるという後続事象が与えられないために行動が減少していきました。

加えて、先行事象に関しても説明しておきます。
行動の前にはその行動を起こす「きっかけ」となる何かの刺激があります。これを先行事象といいます。例えば横断歩道を渡る行動のきっかけとなる「信号の青」、学校に行くきっかけとなる「朝8時」という時間など色々な先行事象があります。

この先行事象は普段あまり意識していませんが、意識して「先行事象」を変えてみることで良い行動を起こしやすくするという働きかけがすることも重要になってきます。
これは環境調整、例えば集中しやすい環境を整えてあげたり、指示の出し方を工夫するなどもよい先行事象です。
例えば図書館という環境に移動することで勉強がしやすくなる。また指示を出すときに言葉だけではなく紙に図を描いたものを添えて指示をだすなどの働きかけも良いかもしれません。

ここでは応用行動分析に関して説明していきました。
では実際に応用行動分析を通して子どもの困った行動に対してどう対応してしたら良いか考えていきましょう。

3.子どもの問題行動への対応 応用行動分析を通して

例えば、お菓子売り場でお菓子を買ってもらえずに泣く子どもの行動を応用行動分析で考えていきましょう。
問題行動が何によって強化されているかを知るためには、問題行動自体に着目するのではなくその前後の出来事を観察することが必要です。
子どもがお母さんとお菓子売り場の前を通りかかった際にお菓子を買ってほしいとお母さんに言いましたが「だめ」と言わたためかんしゃくを起こし大きな声で泣き出してしまいました。しばらくするとお母さんが根負けしてお菓子を買ってあげたので、泣き止みました。
これを図で表すと以下になります。

この例の場合、Aのお菓子売り場という先行事象において、Bの子どもが泣くという行動を起こすことによって、Cのお菓子を買ってもらえるという後続事象につながっていることが分かります。
B
の行動を行うことにより、Cのお菓子を買ってもらうという結果につながったため、今後、この子は泣くという行動が増加する可能性があると言えます。お菓子を手に入れることにより前記した「ごほうび」により行動が「強化」されるということです。

問題行動へ対処していく1つの手段として、前の章で説明した消去を利用するのが次の方法になります。人は行動のあとにほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが消去といいます。
先ほどの例だと以下のようになります。

Bの子どもが泣いたことでCのお菓子を買ってもらえる後続事象が起こらないことで、Bの泣く行動が減少していきます。
泣いたり、かんしゃくを起こした場合に自分の要求がかなったり注目することがあると、その行動が強化されていきます。 

スーパーマーケットなど公共の場所で泣いたり、かんしゃくを起こしたら黙って迷惑のかからないところで好きなだけ泣かせます。それが問題行動の減少につながっていきます。
 
上の例のような問題行動に対応するには、①問題行動を減らしながら、それと同時に②良い行動を増やすことが重要になってきます。そのため、強化と消去の両方を使いながら、良い行動を増やしていきます。
良い行動は「強化」によって増やし、今後減らしたい問題行動は「消去」で対応することで減らしていくことが重要になってきます。

この状況では
①泣く行動があってもお菓子を買わないことで泣く行動が減る。
②お菓子を我慢できた時に褒める。褒められたら嬉しいので我慢する行動が増えていく。
上記のような対応を行っていくことが重要になってきます。
また、もともとその先行事象であるお菓子売り場に行かないという事も一つの方法として有効になってくるでしょう。

※消去バーストに注意
悪循環が起こっている際にその悪循環を止めようと強化していた後続事象を止めることで一時的に問題行動が悪化することがあります。
これを消去バーストと言い今までその行動をすることで本人にとってメリットとなっていたことが起こらなくなったため一時的に問題行動をエスカレートさせることでメリットを引き出そうとする行動原理となります。困った行動に消去で対応するときにはこの消去バーストを乗り越える心構えが必要です。
例えば癇癪を起こすことで要求を通していたのに、これまで通り癇癪をおこしても要求が通らないと一時的に癇癪がひどくなることがあります。しかしながらここで要求を聞いてしまうと元のもくあみになってしまいます。

4.まとめ

今日は子どもの問題行動とその対応に関して応用行動分析を通じて考えていきました。
問題行動が繰り返されている場合、その問題行動をすることで何かしらの本人にとってメリットがあることがあり悪循環になっているパターンというのを散見します。
その場合、問題行動が起こった後のその行動が問題行動を強化していないかどうか今一度考えていただいてはどうかと思います。
また家庭内や学校で頑張ろうとしても中々難しい場合もあるので一度相談頂ければ一緒に考えていくこともできるかと思います。
では、今日の話のまとめです。
問題行動がおこったときには原因と理由についてよく考えてみること、
また問題行動が起こっている時にはその先行事象と後続事象をしっかり考えてみましょうというのが今日の話の大事な点でした。
お子さんの問題行動があり困っている際は一度気軽にご相談頂ければ幸いです。

 

参考文献
1子育てに活かすABAハンドブック―応用行動分析学の基礎からサポート・ネットワークづくりまで  三田地 真実  (), 岡村 章司  (), 井上 雅彦 (監修)
2)イラストでわかる ABA実践マニュアル: 発達障害の子のやる気を引き出す行動療法  藤坂 龍司 (), 松井 絵理子 (), つみきの会 (編集)