睡眠障害は国民病
日本では、一般成人のうち約21%が不眠に悩んでおり、約15%が日中の眠気を自覚しているとの調査結果があります。
こうしてみると、成人の5人に1人、つまり1500万~2000万人の人が不眠に悩んでいると推計されます。
背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの多様化、24時間社会における生活リズムの乱れ、ストレスなどがあるのかもしれません。
不眠の種類
不眠といっても症状は人それぞれ様々で不眠のパターンによっていくつかの種類に分けられます。
不眠症タイプ
入眠困難
床についてもなかなか(30分~1時間以上)眠りにつけない。
中途覚醒
いったん眠りについても、翌朝起床するまでの間、夜中に何度も目が覚める。
早朝覚醒
希望する時刻、あるいは通常の2時間以上前に目が覚め、その後眠れない。
熟眠障害
眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない。
朝早く目が覚めたり、途中で何度も目が覚めたりといった症状がうつ病との関連が強いとされていましたが、最近の研究では、寝付きが悪いことが最もうつ病と関連しているとされています。
どちらにせよ、うつ病ではどのパターンの不眠にもなる可能性があります。
また統合失調症や双極性障害などの慢性疾患の症状悪化の前兆としても不眠が出現することもあるので注意が必要です。
よい睡眠のための10のコツ
1.良い睡眠をとることでからだもこころも健康になります
睡眠は心身の疲労を回復する働きがあります。
睡眠が足りなくなると生活習慣病のリスクが高まることが知られています。また睡眠不足はうつ病や不安障害などこころの病気の危険因子となる可能性もあると言われています。
睡眠不足や睡眠障害による眠気が集中力低下につながったりストレスホルモンであるコルチゾールを増加させるという研究結果があります。
2.早寝早起きでなく早起き早寝
昔から早寝早起きと言われますが、現在では「早起き早寝」の方が良いと言われています。
早起きすることで夜早い時間に眠れるようになり、翌日も早起きできるようになります。 朝早起きをして日光を浴びることで体内時計がリセットされ1日のリズムを整えます。
また朝日光を浴びることは心を穏やかに保つ働きのあるセロトニンの活動を高める働きがあります。
3.眠る前の飲酒は睡眠の質を低下させます
就寝前にリラックスすることは質のいい睡眠に有効です。
睡眠薬代わりにお酒を飲む方もいるかと思いますが、就寝前の飲酒は睡眠の質を悪化させるため控えるようにしましょう。お酒は一時的に眠りやすくはしますが、睡眠が浅くなり熟睡感が少なくなります。
またお酒には耐性があるため徐々に量が増えていきアルコール依存などのリスクがあることも知られています。
4.夕方以降カフェインの含まれた飲み物の摂取は控えるようにしましょう
就寝前3~4時間以内のカフェイン摂取は寝入りが悪くなったり、睡眠を浅くする可能性があるため、控えるようにしましょう。
カフェインは覚醒作用があり、この作用は3~4 時間続くと言われています。また、カフェインには利尿作用があり夜中に尿意で目が覚める原因にもなります。
5.年齢に応じて適切な睡眠時間を
成人の睡眠時間は6~8時間が標準的と言われています。しかしながら適切な睡眠時間は個人差があり、加齢によっても徐々に減っていくことが分かっています。
10代前半では8時間以上、25歳では約7時間、45歳では6.5時間、65歳だと6時間と20年後ごとに30分程度減少していくことが知られています。
ただし必要な睡眠時間以上に長く睡眠をとったからといって、健康になるわけではありません。日中の眠気が出ない程度の睡眠時間であれば良いということを知っておくことが重要であると考えられます。
6.いい睡眠のためには環境づくりが重要
よりより睡眠をとるためには環境を整えることも重要です。 睡眠をとる場所はリラックスが出来、安心感のある空間であることが重要です。
また睡眠環境のポイントとして明るさ、音、温度湿度が挙げられます。 まず明るさとしては眠るときの明るさとして0.3~1.0ルクスが良いと言われています。0.3~1.0ルクスというのは薄暗くものの形がうっすらと分かる程度の明るさです。
また寝る前に携帯電話から発されるブルーライトは睡眠の質を悪くするので避けた方が良いです。
つぎは音になります、睡眠には40dBA(デシベルエー)以下の音環境が望ましく、50dBA以上になると半数の人は眠りにくくなると言われています。40dBA以下の音の目安はそよ風に揺れる木の葉の音や静かな図書館くらいの音です。できるだけ静かな環境が望ましいのですが全くの無音だと不安な気持ちになるため眠りにくくなることが分かっています。 寝る前にリラックス目的で音楽を聴くことはいいですが、テレビやラジオをつけっぱなしにして寝てしまうと睡眠の妨げになるのでタイマー機能などを使うのもいいでしょう。
睡眠中の温度は33℃前後、湿度は50%前後が良いとされています。季節によって過ごしやすい、心地よいと思える範囲で衣類や寝具、またエアコン等を活用して温度、湿度は設定するようにしましょう。 入眠時は、身体内部の温度が効率的に下がることによって眠気が促されるので入眠30分~1時間程度前に入浴して体温を上げることも効果的です。
7.適度な運動で良い睡眠を
日中に適度な運動を行うことで、睡眠と覚醒のリズムを整えることに役立ちます。
また運動は中途覚醒を減らし、睡眠を安定させ熟眠感の向上につながります。 また運動は睡眠だけでなく、加齢によって低下する日常生活動作(ADL)の維持向上にも効果がありますし、生活習慣病の予防にも効果的です。
8.眠くなってから寝床に入るようにしましょう
寝つける時間は季節や日中の活動量によって変化します。寝る前の2~3時間は最も寝付きにくい時間です。
一度不眠を経験すると、不安になり早くから寝床に入る方がいますが、意図的に早く寝床に入るとかえって寝付きが悪くなります。 眠くなったタイミングで寝床に入るのがスムーズな睡眠へのポイントです。
眠たくないのに無理に眠ろうとすることで緊張や不安が強くなり悪循環になってしまうことは不眠の方でしばしば認められます。
9.長い昼寝は不眠には逆効果
睡眠不足があれば眠気があるのは当然で、対策には昼寝がお薦めです。
午後3時前までの1時間以内の昼寝は夜の睡眠に影響がないと言われています。30分程度の短時間の昼寝はその後の集中力を高め作業効率を良くすることにも寄与します。
お勧めできないのは夜間の不眠があるためその分昼寝をしてしまうことです。長時間の昼寝をすることで夜間の睡眠も浅くなるので悪循環に陥ってしまいます。
10.不眠があれば専門家に相談を
寝付けない、睡眠が浅い、寝ても日中の眠気が強いなど、睡眠に関して問題があり日常生活に支障が出るなど困った場合は早めに専門家に相談することが重要です。
睡眠不足は上にもあげたように体の病気、心の病気の原因となります。 睡眠習慣に関して適切なアドバイスを受けることで睡眠が改善するきっかけとなる可能性があります。
また睡眠障害自体がこころの病気の前兆の可能性もあります。
睡眠薬などの薬を使って治療をする場合は医師から指示された用法や用量を守り、薬剤師から具体的な服薬指導を受けることが重要です。
また、お酒とを一緒に飲まないことは特に重要です。お酒と睡眠薬を同時に飲むとふらつきなどの副作用が強く出現したり、記憶障害、等が起こる可能性があり、危険です。 睡眠薬を飲み始めて副作用や気になる症状が出た場合は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。